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グレツキー キングス移籍 NHL

これはグレツキーがエドモントンというカナダのチームからロサンゼルスへの移籍を発表した記者会見の時の写真が使われたカードである。グレツキーがロサンゼルスのユニフォームと一緒に写っている最初の写真ということで、極めて有名な1枚だ。グレツキーのロス移籍はNHL史上の大事件だった。そもそもカナダという国はアメリカという超大国と隣り合わせの位置にあるという宿命を負った国だ。「メキシコの最大の悲劇はアメリカの隣にあること」というジョークがあるくらい、超大国アメリカに隣接している国にとって、そのことが様々な面で問題を引き起こす。アメリカと隣り合わせというデメリットが、アメリカという巨大市場へのアクセスが容易であるというメリットとどちらが大きいか、これは大変難しい問題だ。当時は、グレツキーがアメリカに行ってしまうということが、「良いものは皆カナダからアメリカへ流出してしまう」という現象の1つとして問題視された。有名な話だが、国会でも取り上げられたという。ところが、長期的にみた場合、グレツキーのロス移籍は、そうした文脈とは全く違った影響をNHLにもたらした。まず、アメリカでのNHLの人気が急上昇し、アメリカ国内に次々とNHLのチームが創設された。今では1年中温かくそれまでウインタースポーツと無縁に近かったフロリダ州にさえ、アイスホッケーのNHLチームがあるほどだ。現在のアイスホッケーの北米全体に及ぶ人気は、グレツキーのロス移籍によって可能になったと言ってよいだろう。グレツキーの移籍とアメリカ国内でのエキスパンションとの関係を明示的に示す証拠はないが、グレツキーがアメリカのチームに移籍したことが背景にあることは間違いない。それから、アメリカでの人気が高まると当然、市場の大きなアメリカのチームのほうが試合などによる興行収入が多く入ることになり、年棒の高額なスター選手がこぞってアメリカに移籍していくこととなった。カナダのチームの中には本拠地をアメリカへ移すところさえ現れた。こうしたカナダにとっての危機的な動きも、その端緒はグレツキーのロス移籍にあると言ってよいだろう。このカードはそうしたNHLのここ20年の歴史を想起させる貴重な1枚なのだ。
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