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真夜中の探偵 有栖川有栖

著者の本格推理小説ものは昔よく読んだ記憶がある。たまたま立ち寄った本屋さんでサイン本として置いてあったので、懐かしい気持ちもあって読むことにした。読んだ感想は複雑だ。まず驚いたのは、本書がいわゆる「パラレルワールド」ものだということだ。舞台は「平成22年」ではなく「平正22年」。北海道が日本から独立したことになっていたり、京都に原爆が投下されていたりしている。最後まで読んだが、作者がなぜそういう設定にしたのかは、結局判らなかった。壮大な物語の一部ということなのかもしれないが、その壮大な架空の世界をもっと知りたいと思わせるような魅力もあまり感じられなかった。一応ミステリー要素はあるものの、いかにも陳腐で説得力がない。まさか、説得力のなさを覆い隠すために現実とは違う世界を構築したのではないとは思うが、そう感じてしまうほど話自体がドタバタしている。最後に何も解決しないままで、読者にどうしろというのか。シリーズものということなので、もう1冊読んでから判断すべきなのだろうが、もう1冊読む気にもあまりなれず、複雑な思いだ。(「真夜中の探偵」 有栖川有栖、講談社)

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