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水底フェスタ 辻村深月

書評誌で、「著者の転機になるかもしれない画期的な作品」としてフルマーク(5つ星)がつけられた作品で、期待して読んだが、書評通り、これまでの著者の作品とはややイメージの異なる、我々が普通に暮らしている地域社会の裏に潜む暗い部分を徹底的に抉り出すような怖い作品だった。内容的にもかなり衝撃的で、ミステリーファンとしては、衝撃的な部分は簡単に予想できてしまったのだが、それでも「やはりそうだったのか」と判ったときの衝撃はかなりのものだ。社会の変化にへの抵抗とかそれを助長する閉鎖性への痛烈な批判として読むことも可能だが、そうした恐ろしい話が、社会性の問題ではなく人間が本来的に持っているものとして描かれているのが恐ろしさの根源にあるような気がする。最近こうした暗い話なるべくを読まないようにしてきたので、唐突にこうした話を読むと何だか落ち着かなくなってしまう。(「水底フェスタ」 辻村深月、文芸春秋社)

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