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ピカソは本当に偉いのか? 西岡文彦

「ピカソの絵は本当に美しい(上手い)のか?」「どうしてこんな絵が偉大だとされるのか」「どうしてピカソの絵はそんなに高価なのか」という素朴な疑問に、真正面から答えてくれる本書。「目からウロコ」と帯に書かれているがその通りの本だ。考察される範囲は、ピカソが登場し巨匠となっていった時代、例えば商工業の発展、金融市場の発達といった社会情勢、アメリカの台頭といった世界情勢、画商・美術館・オークション会社など美術を取り巻く仕組みの変化、ダーウィンの進化論、など実に広範囲に及ぶ。本書の素晴らしいところは、そうした広範囲からの考察にあると思うが、最も素晴らしいのは、最後の章で、最初に提示した3つの疑問に対して、曖昧に逃げることなく、ちゃんと答えを出してくれているところだ。最後の章を読めば、難解でも全体を読んだかのように著者の論旨を思い出すことができる。全ての啓蒙書はこうあってほしいという見本のような良本だ。(「ピカソは本当に偉いのか?」 西岡文彦、新潮新書)

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