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さようなら、オレンジ 岩城けい

アフリカから難民としてオーストラリア(多分)に逃れてきたアフリカ出身の女性、日本から夫の仕事の関係で同じくオーストラリア(多分)にやってきた日本人女性の話が交互に語られる本書。教養も境遇も全く違う2人が語学学校で知り合い、お互いに相手を意識し尊敬しながら、自らが変わっていく様を見事に描いている。ちょっとした心理描写等でも「この描写は実際に体験していないと書けないだろうなぁ」と感じる場面がいくつもある。もちろん、アフリカの女性の話の方は、「彼女自身から聞いたこと」か「そばで見ていて感じたこと」ということになるのだろうが、その部分と日本人の語り(語学学校の先生への手紙という形式になっている)の部分の緻密さが変わらないのは、おそらくこの作者の持っている力を示しているだろう。作者が実際に体験し感じたことを綴った処女作がその作家の代表作になるという例は数多いが、この作者の持っている天性は、それだけでは終わらない何かを感じさせてくれる。(「さようなら、オレンジ」 岩城けい、筑摩書房)

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