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想像ラジオ いとうせいこう

本書は、東日本大震災で亡くなった人その関係者の無念や悲しみを真正面から扱った小説だ。全く予備知識なく読んだので、最初のうちはそれが判らないのだが、読み進めていくうちに、主人公のDJパーソナリティーが震災で亡くなった人だということが判ってきて、これはじっくり読まなければという気にさせられた。正直に言うと、本書で作者が書きたかったこと、言いたかったことが何なのか、私には最後までよく判らなかった。死者がもし何かを語れるとしたら何を語るのか、残された関係者が何を思い、何を思いとして残し何を忘れたいのか、それらは短い言葉で表現しようとすると途端に「嘘くさく」なってしまうような気もするし、同様に、この本について語ろうとすると同じようなことになってしまうのかもしれない。「忘れて次に進む」ということへの恐れや違和感を共有しつつ、こうした本を書いた作者に尊敬の念を感じる。(「想像ラジオ」 いとうせいこう、河出書房新社)

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