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少女外道 皆川博子

著者の本は2冊目。最初に読んだ1冊目は19世紀くらいの海外を舞台にしたミステリータッチの長編、本書は戦争前後の日本を舞台にした短編集ということで、形式・内容ともほとんど共通点がないが、いずれも他に比べようのない作者独特の世界を垣間見させてくれる。本書には、戦前戦後の日本における女性のおかれた境遇を核として、そこから生じる「外道」と「真っ当」の境界の曖昧さを抉り出すような物語が収録されている。そこにあるのはそうした外道性の弁護でもないし、女性がおかれた境遇を告発することでもない。ただただそこにそうした物語があったということを提示して終わることの不気味さを十分に味わせられる。作者がどういう作家なのかは、もっと沢山の作品を読まないと判らないのかもしれないが、本書は作者の特徴をかなり純粋な形で提示してくれている作品なのではないかとふと感じた。(「少女外道」 皆川博子、文春文庫)

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