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ラオス現代文学選集 ドワンチャンパー 他 二元裕子 訳

仕事でラオスを訪れることがあるかどうかはまだ判らないが、何度かミャンマーに出張し、昨年カンボジアを初めて訪れた時、やはり「次はラオス」かなと思った。この国は、人口が少ないこともあるのだが、歴史的な出来事や政治問題で何となくイメージを持っているベトナム、ミャンマー等に比べて、極端に情報が少ない。訳者による「あとがき」に「社会主義国独特の啓蒙的な小説、政治的色彩の強い小説でないものを選んだ」とあるが、そのあたりの選択が実に的確な1冊だと思う。書かれている内容は、この国の戦争、内乱、貧困、格差というものを抜きにしては語れないものばかりで、特に戦争と内乱を背景にした作品には、私自身、この国についてほとんど何も知らなかったことと痛切に感じる。その中で、強く生きた人、葛藤しながら苦しんだ人が生き生きと描かれている。特筆すべきは、この本の訳が素晴らしいことだ。全く知らない国の生活や人々の心情が的確に伝わってくるばかりでなく、アジアの国を訪れた時に感じる熱気と匂いがはっきりと文章から立ち上がっているのには驚かされた。知らない国を知るためという感じで読み始めたのだが、その風土を感じさせつつ格調高さを維持するその文体に強く惹かれた1冊だった。(「ラオス現代文学選集」 ドワンチャンパー 他 二元裕子 訳 、大同生命国際文化基金)

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