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遺体 石井光太

東日本大震災についての本は、もうすでにかなりの数がでているのだろうが、私自身はまだほとんど読んでいない。まだ記憶が生々しいなか、まだ決定的に読むべきと感じる本に出会っていないということもあるし、まだそうした決定本がでているはずがないという思い込みもあるかもしれない。そうしたなかで、本書を読んでみようと思った自分の心境はよく判らないが、まず最初にとりかかるべきなのは事実を知ることではないかという無意識の感覚が、まずはドキュメンタリーから読んでみようという気にさせたのかもしれない。といった理屈を考えながら読んでみたのだが、実際に読んでみると、やはり凄まじい事実の前に、ある意味、何も考えられなくなってしまった。書かれている事実が既知のことをなのか初めて知ったことなのかも考えられないまま、ただページをめくり、大げさに言えば、すべての思考が最後に押し寄せてきたように思われた。(「遺体」 石井光太、新潮文庫)

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