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生存者ゼロ 安生正

本書は裏表紙の短い解説や帯の文章で大体のあらすじや話の展開はわかってしまうのだが、肝心のパニックをもたらした敵の正体にはびっくりさせられたし、その正体が解明された後の怒涛の展開にも驚かされた。事件を中途半端に解決させずに行くところまで行ってしまうのもフィクションとしては良い。本書を読んでいると、深読みかもしれないと思いつつ、どうしても東日本大震災の光景がだぶってしまう。ずっと頭のなかで映像化しながら読んでいると、なぜか津波の映像が思い浮かんできてしまうのだ。これは著者の文章が優れているからに違いない。この作品、映画化できるのであれば是非してほしいとは思うものの、この文書の迫真性が映像よりもリアルなのだと思うと、その感覚を大切にしたいと思う気持ちもどこかにある。(「生存者ゼロ」 安生正、宝島社文庫)

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