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昨日の海は 近藤史恵

主人公が祖父母の心中事件の真相を探るという内容で、一応ミステリー仕立てにはなっているが、本書の核心が謎解きではないことは読み始めてすぐにわかった。それは、作者が真相は何かという謎解きで読者をうならせたかったのではなく、真相を探る過程、真相を探ろうとする主人公の心情、真相に対峙した時の主人公たちの心情を書きたかったのだろうということだ。その作者の意図通り、将来について考えていかなければいけない年頃に差し掛かる主人公の心情、主人公と幼い従姉妹や芸術好きのクラスメイトとの交流などが丁寧に書かれていて、その部分だけでもぐいぐい引き込まれてしまった。(「昨日の海は」 近藤史恵、PHP研究所)

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