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黒百合 多島斗志之

年末恒例の年間ベスト本で2015年の文庫本第2位(実質は第1位との注釈つき)の作品。文庫としてこれほど高い評価をうけるということは、単行本が刊行された時にもかなり話題になった作品のはずなのだが、全く記憶にない。単行本の時には話題にならなかったが文庫化された時に話題になる本というのも時々あるのでその類の本なのかもしれないと思いながら、とにかく読み始めた。内容としては、「ミステリーと文学の融合」というキャッチフレーズの通り、読んでいる最中は文学作品を読んでいるような感じだった。正直言うと、ミステリ-の部分は、読み終わっても少し釈然としない部分が残る。小説の語り手である主人公にも、謎の全容が解明できていないと思われる部分があるからだ。これはミステリーのお約束を逸脱している気がするが、本書の本領はミステリ-とか謎とかの部分でないところにあると考えれば合点がいく。早い話が、本書は、ミステリーとか純文学とかそういうジャンルにこだわらずに読むのが正解なのだろう。(「黒百合」 多島斗志之、創元推理文庫)

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