goo

郵便配達人花木瞳子が盗み見る 二宮敦人

本屋さんでサイン本を見つけて、どういう話なのか全く予備知識なしで購入した1冊。最初のうちは、緩いお仕事小説のような感じなのだが、次第にそこに描かれている事件が、非常に陰惨なものであるということが判ってくる。ここで描かれている郵便配達を巡るシステムは、性善説にのっとったもので、悪用しようとすればいくらでもできてしまう危険を孕んでいるということを教えてくれる。社会の日常に潜む怖さというのは、郵便物を受け取る人々だけではなく、逆に郵便配達を仕事としている人にも襲いかかるかもしれない。本署を読むと、世の中の大半の「お仕事小説」というものが、物事の良い面を強調したお気楽な小説だということがよく判る。メインストーリーの間に語られる、主人公が郵便配達の仕事を自らの職業として選んだ理由のエピソードも実に良い。既に第2作目も刊行されているようなので、読むのが楽しみだ。(「郵便配達人花木瞳子が盗み見る」 二宮敦人、TO文庫)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )