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教団X 中村文則

ちょうど第1部と第2部で上下巻に出来るところをわざわざ一冊にして買い得にしてくれたのは有難い話だが、結果的には2分冊にした方が、読む場所が定まっていない私のような読者にとっては、じっくり読むことが出来て良かったかもしれない。一冊になっていると、持ち運びの関係で読み切るまでの時間に制約が出来てしまうことがあるからだ。読み始めてすぐに、この本は、あまりストーリーを追いかけたり、登場人物の誰かに感情移入したりして読む本ではないことに気付いた。強いて言えば、主人公は「作者自身」であり、ストーリーは「作者の思考の流れ」ということになる。小説の中に挿入された教祖の説話は正に作者の思考の代弁だし、ストーリーの混沌はそのまま作者の心の中の混沌だ。私自身の趣味にはあまり合わなかったが、作家自身が執筆にあたってどれだけのリスクを背負ったかを基準にすれば、本書は紛れも無い傑作だろう。(「教団X」 中村文則、集英社」)

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