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流 東山彰良

昨年の直木賞受賞作。この作家の本は、本作に限らず、色々な書評で高い評価を受けている。そうしたことが最近分かってきて、読もうかどうか迷っていたら、運よく読書の大先輩ともいえる方から本書をプレゼントされ、遅ればせながら読んでみることにした。話は、台湾の一人の青年が祖父の死をきっかけとして、自らの出自を辿りながら、成長していく物語だ。時代に翻弄された祖父母の世代や親の世代への反目、中国人特有の年長者に対する無条件の尊敬、家を大切にする気質といった相矛盾する心情が若い主人公を突き動かしていく物語は、中国ならではの壮大な大地を感じさせる。物語後半の台湾は、ちょうど自分が台湾に家族と観光旅行をした時期と重なる。その当時はそんなことは考えもしなかったが、呑気に観光をしていたすぐそばで、まだ政治的に安定しているとは言えない状況が当時の台湾にはあったんだなぁと感慨深いものを感じた。(「流」 東山彰良、講談社)

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