書評、その他
Future Watch 書評、その他
スペース金融道 宮内悠介
作者の本は3冊目。最初の第1冊目は本当に面白かった。次の第2冊目は、読んでいて楽しい作品ではなかったが、とにかく作中の1つの情景が今でも心に浮かぶインパクトの強い作品だった。そして3冊目の本書、有名な漫画作品のSFパロディのような題名にびっくりしながらも、期待を持って読み始めた。読後の感想は、とにかく面白いの一言だ。返済能力があるものに対しては、それがアンドロイドだろうが人間以外の生物であろうが、とにかくお金を貸すという未来の金融会社の話だ。まずは、知性を持った植物に対して「「光合成で返済できる」という理由で融資をするというくだりに驚かされる。どうやって返済するのかといった突っ込みが野暮に思えてしまう。金融業である限り、取り立ても当然重要。何百光年離れた星であろうが各融合櫓のなかであろうが、容赦ない取り立てが行われる。植物への融資という発想もすごいが、これなどは本書の奇想天外さの序の口のようなもので、あとからあとからとんでもない話が進行していく。話自体とんでもなくハチャメチャだし、話の論理に正直ついていけないところも多いのだが、何故かしっかりしたSFとしての枠組みを堅持しているように思えるのもすごい。最初から最後まで意表を突く設定とストーリー展開、特に最後の話の「言葉にならない」数ページ、本当に楽しませていただいて「有難う」という感じだ。(「スペース金融道」 宮内悠介、河出書房新社)
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