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オンライン講義 宇宙論13

今回のテーマは「重力と宇宙」。重力とは質量や熱エネルギーが存在するところに生じる弱い力であること、重力がなければこの宇宙は永遠に水素とヘリウムの霧がたちこめるだけの空間だっただろうということなどをこれまで学んできたが、今回はその重力についてこれから解明しなければならない問題という観点からの解説。現在の重力法則によれば、物質が宇宙を満たしているという現実とアインシュタインの一般相対性理論から「特異点定理」(宇宙には端っこがある)という定理が導かれる。一方、様々な観測から導かれる「過去にインフレーションという現象があった」という仮説は、この特異点定理が成り立たない世界である。宇宙が物質で満たされているという厳然たる観測結果とこれまで積み上げてきて蓋然性が高いとされているインフレーション仮説の齟齬をどうやって解消するか、それが今の宇宙学のホットな課題とのことだ。重力法則が時間の経過で変化しているとか、色々なアプローチがあるらしい。今回の講義では、こうした最先端の研究成果の解説もためになったが、それ以上に、参加者と講師の質疑応答を通じて科学者特に宇宙論研究者の思考が色々わかって興味深かった。宇宙科学者は、科学者の中でも特に「世の中の偶然性というものを排除して背後にある必然性を見つけたい」「経験則をなんとか普遍的な法則にしたい」という気持ちが強いとのこと。確かに、一般的に科学というものはある時点で「経験則」と「普遍的法則」を同一視するという妥協を含んでいる気がするが、そこをなんとかしたいというのが宇宙科学の研究者の出発点のような気がした。
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