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くよくよマネジメント 津村記久子

著者の本を読み続けていると、最近の作品になるにつれて明るさを増していることが手にとるように分かるのだが、本作を読んで『あれっ」と感じた。題名の通り、色々なことにくよくよしたり落ち込んだりする自分を見つめ、自分を追い込んだり開き直おったりするのではなく現状をひたすら静かに受け止める様を描いたエッセイ集で、文体も内容も作者自身が精神的に辛かったと吐露している昔の作品のように感じたからだ。読み終えて巻末を見るとその疑問はすぐに解消、要はこの本は10年ほど前に書かれた作品だったのだ。ネットで著者の本を探していて未読だったので購入したが、単行本なのでてっきり最近の本だと勝手に勘違いしていたという次第だ。2010年から始まった雑誌の連載をまとめたもので2016年に単行本化。著者自身も書いた当時を「苦しかった時代の文章」と振り返っていて、当時のことを文章で読み返すと懐かしさ以上の効用があると指摘する。作家にとって作品は読者のためだけではなく書くことで作家自身も救われるのだと改めて感じた。(「くよくよマネジメント」 津村記久子、清流出版)
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