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うるさい日本の私 中島義道
著者の本はこれまでに10冊以上読んでいるが、本書はその中でも最も古い著作ということになる。これまで読んできた本の中で著者は再三日本の町中に流れる大音量の自動録音テープや拡声器での訴えかけといった騒音公害について言及しているが、本書はそのテーマを絞った一冊。一冊を通してその理不尽さを訴える著者の行動や発言を読むと、いかに著者が世の中の無関心、無理解、無責任、優しさという仮面をつけた悪意を相手に孤軍奮闘してきたかがうかがわれ、自分自身反省を禁じ得ない。自分の経験で言うと、時々訪れる名古屋駅地下のJRから地下鉄に乗り換える通路での献血を訴える拡声器のボリュームの大きさにびっくりして、耳をふさぐようにして足早に横を通り抜けながらもう少し何とかならないかといつも思う。大声を出している本人は「世の中の為になることをしている」という満足感からか自信たっぷりの口調で、その声が地下街にどのように響いているのか、どれほどの不快感を周りに振り撒いているのかに全く無頓着のように思える。著者の言いたいのはこうしたことなんだろうなぁ、その大声はとにかく近寄り難いほどなので「かえって逆効果ですよ」と嫌味の1つも言いたくなるのだが、言えずに通り過ぎる自分自身に自己嫌悪を感じてしまう。本書は、単行本で刊行されてから20年以上経っていて、自分が手にしたのは3度目の文庫化。それだけ読まれているということだ。ちなみに本書で槍玉に上がっている銀行だが、今日自動機で払出をした際に自動音声がどのくらいうるさいか耳を傾けてみたが、操作を行っている最中全く音声は流れなかった。(「うるさい日本の私」 中島義道、角川文庫)
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