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花殺し月の殺人 デイヴィッドグラン
副題は「インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」。今からちょうど100年前の1921年、アメリカオクラホマ州で起きた一人のネイティブアメリカン女性の周辺で多発した殺人事件を追うノンフィクション作品。作品は3部構成で、第1部はその事件の詳細、第2部は一人の司法省捜査局の捜査官が犯人を追い詰めるまでの活躍、そして第3部が著者自身による100年後の調査でたどり着いた本当の真相。ノンフィクションでありながら、読んでいてとにかく驚きの連続だった。第1部では、こんな衝撃的な事件がたった100年前のアメリカで起きていたことを知らなかったという驚きだ。これは、当のアメリカでも教えられることがあまりない事件だそうで、そのこと自体にこの事件の異常性が際立つ。第2部では、第1部で全く混沌としていた事件の全体像が一人の捜査官によって少しずつ暴かれていくのだが、予想もしていなかった犯人とその動機に驚かされるし、さらにこの事件がFBI連邦捜査局の発足に繋がっていくという話にも驚かされた。そして第3部で語られる当時の捜査官でさえたどり着けなかった事件の全貌は、たった100年前のアメリカのこととは信じられないもので、アメリカでもあまり知られていない理由がそこにあるという戦慄の内容だ。この作品はデカプリオ主演で映画化が進行中とのこと。コロナ禍で完成が延びているようだが、作品が本書のようにアメリカの暗い過去という本質を語るものになっているのか、それともこれまで通り捜査官の活躍を語るヒーロー談になってしまっているのか、是非映画を見て確かめてみたいと思った。(「花殺し月の殺人」 デイヴィッドグラン、早川書房)
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