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透明な螺旋 東野圭吾

ガリレオシリーズ最新刊。第10作目で、本書の帯には「初めて明かされるガリレオの真実」といった言葉が書かれている。このシリーズは、巻を重ねるごとに学究の徒である変人ガリレオが物理学者の知識を活かして謎を解決するという要素が薄まり、ガリレオが普通に人間的な悩みを抱えた人間として描かれるようになってきていて、本書もその流れに沿った内容だ。一方、このシリーズのもう一つの特徴である、何かを「守る」ために善悪を超えた決断をしてしまう犯人、犯人へのシンパシーと真実の解明の狭間で逡巡する主人公という構図は本書でも顕著だ。本作では、犯人との知的バトル、華麗な謎解き、アリバイ崩しといったミステリー要素はほとんどなく、人生に抗うような登場人物達の人間模様、心理描写に終始している。複雑な謎解きが強調されるミステリーに少し飽きてきた自分としてはこういう作品も良いなぁと思う反面、もう少し謎解き要素があっても良いかなとも思った。(「透明な螺旋」 東野圭吾、文藝春秋社)
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