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希望病棟 垣谷美雨

面白いストーリーの中に様々な社会問題を織り込んで読者にその問題について考えるキッカケを与えてくれる著者の一冊。本書も日本に厳然として蔓延る偏見とその根底にある格差社会や世代間ギャップなどを考えさせる内容だ。何気ない行動や発言に潜む無自覚の偏見、そうでないと見える人とあからさまな人の違いが紙一重であるという現実がストーリーの中で畳み掛けるように展開する。今回も前作と同じ荒唐無稽な設定があるが、それがストーリーの本質ではないことは本作も全く同じで、その設定はストーリーをスムーズに進めるための道具に過ぎない。さらに言えば、この設定は最後に明かされる親子二代にわたるサプライズと相俟って本書の内容の重苦しさを緩和させる巧妙な仕掛けだったのだと気付かされた。(「希望病棟」 垣谷美雨、小学館文庫)
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