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宇宙はどうして始まったのか 松原隆彦

相対論、量子論、素粒子論などの知見を通して宇宙の始まりについて考える一冊。宇宙論に関する解説書、啓蒙書であると同時に最先端の研究者が日頃から考えていることを吐露するエッセイでもある。色々な宇宙の始まりに関する本やオンライン講義を読んだり聞いたりしていてずっとモヤモヤしていたことがあったのだが、本書のインフレーション、再加熱、ビッグバンという基本的な流れの解説のところで、ズバリと「そのモヤモヤはビッグバンという言葉に関する素人が陥りやすい思い込みだ」という説明がありびっくりした。自分が感じていたのと同じモヤモヤを感じていた人が多いということが分かったのと、そのモヤモヤを完全に払拭してもらえたのが嬉しかった。本書では、一般的な宇宙の始まりに関する説明の後、「そもそも宇宙とは何か」という問いに関する最新研究と著者自身の考えが語られる。相対論、量子論、素粒子論の進展によって「観測者」という概念が持ち込まれ、さらに人間や宇宙そのものの存在がとてつもない可能性のわずかな一つに過ぎないことなどが分かってきたところで、そもそも宇宙とは何だという話になる。本書では、宇宙の本質は情報だという考えや多宇宙論が紹介されているが、素人には宇宙論の研究がもう行き着くところまで行き着いてしまったようにさえ思える。最後に書かれている「十分に賢いプランクトン」の思考実験は、最先端の宇宙論が置かれている立場がよく分かって特に面白かった。(「宇宙はどうして始まったのか」 松原隆彦、光文社新書)
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