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パラダイス・ガーデンの喪失 若竹七海

葉崎市という架空の町を舞台にした人気作家によるシリーズ作品の最新刊。著者の長編作品の特徴はとにかく登場人物が多くてしかも多種多様ということ。さらに本シリーズは舞台が近所付き合いの濃厚な地方都市という設定なので、この人とこの人の関係は何でとか、誰と誰がどういう知り合いでという人間関係を頭に入れるだけでも大変だ。その辺りは必要に応じてどこかでまた触れられるだろうとタカをくくって流し読みしようと思っても、著者独特の伏線がどこに潜んでいるかわからないのでそれもできない。もう少し何とかならないかなぁと思うこともあるが、このもつれた人間関係こそが、本格ミステリーの密室トリックやアリバイトリックと同じレベルの著者独特の謎とき要素なのだと思う。言い換えれば、最近の著者の作品は人間関係を鍵とする新しいジャンルと言えなくもない気がした。(「パラダイス・ガーデンの喪失」 若竹七海、光文社)
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