書評、その他
Future Watch 書評、その他
眠れなくなる宇宙の話 佐藤勝彦
本書は、宇宙論の入門書ということで、人類が宇宙をどの様に観察し、そこから何を発見してきたのかが時代に沿って判りやすく丁寧に説明されている。本書の「眠れなくなる…」という題名の意味するところは、「心配や恐怖で眠れない」ということではなく、面白くて「寝るのを忘れて夜空を見てしまう」ということだ。
まず最初にびっくりしたのは、冒頭でアイザック・アシモフの名作「夜来たる」が紹介され、もし地球に夜がなかったら、すなわち人々が夜空の星を観測することが出来なかったら、天文学という学問そのものがなかった可能性が高いという著者の考えが提示されていることである。「夜来たる」を読んだ時、私は「この話は専門的に見ても本当に成り立つのか」を天文学の専門家に聞いてみたくて仕方がなかった。この本を読んで、その疑問が明確に答えられているのをみて、びっくりしたというか、嬉しかった。やっぱりアシモフという作家は、科学者の目を持ったすごい作家だったんだなぁと思う。
本書は、近代以前の天文学の発展についての解説が半分以上を占めていて、最近の動向を知りたいという読者にはややまだるっこしいのだが、星を執拗に観察し、観察の精度をひたすら高めることに努力し、考察を続けた人間の英知には感心させられる。これまでの考えと観察結果が矛盾したとき、観察結果に間違いがあると考えるか、これまでの理論が間違っていると考えるか、あるいは観察できていない別の事実があると考えるのか、その3つのうちのどれなのかを見極める必要がある。観察結果に誤りがあるという選択肢を排除できるほどに、観察技術が進歩したことが、その後の科学理論の進歩に大きな役割を果たしたという事実は、「技術」というものの大切さを改めて認識させてくれる。19世紀あたりの記述を読むと、そのころにすでにそんなことまで判っていたのかということに驚かされる。本書では、20世紀以降の宇宙に関する天文学の成果は、最後の1章だけしか書かれていないが、それまでの天文学の歩みと、現在まで残されている謎が何であるかがよく判る良い本だと思う。(「眠れなくなる宇宙の話」佐藤勝彦、宝島社)
まず最初にびっくりしたのは、冒頭でアイザック・アシモフの名作「夜来たる」が紹介され、もし地球に夜がなかったら、すなわち人々が夜空の星を観測することが出来なかったら、天文学という学問そのものがなかった可能性が高いという著者の考えが提示されていることである。「夜来たる」を読んだ時、私は「この話は専門的に見ても本当に成り立つのか」を天文学の専門家に聞いてみたくて仕方がなかった。この本を読んで、その疑問が明確に答えられているのをみて、びっくりしたというか、嬉しかった。やっぱりアシモフという作家は、科学者の目を持ったすごい作家だったんだなぁと思う。
本書は、近代以前の天文学の発展についての解説が半分以上を占めていて、最近の動向を知りたいという読者にはややまだるっこしいのだが、星を執拗に観察し、観察の精度をひたすら高めることに努力し、考察を続けた人間の英知には感心させられる。これまでの考えと観察結果が矛盾したとき、観察結果に間違いがあると考えるか、これまでの理論が間違っていると考えるか、あるいは観察できていない別の事実があると考えるのか、その3つのうちのどれなのかを見極める必要がある。観察結果に誤りがあるという選択肢を排除できるほどに、観察技術が進歩したことが、その後の科学理論の進歩に大きな役割を果たしたという事実は、「技術」というものの大切さを改めて認識させてくれる。19世紀あたりの記述を読むと、そのころにすでにそんなことまで判っていたのかということに驚かされる。本書では、20世紀以降の宇宙に関する天文学の成果は、最後の1章だけしか書かれていないが、それまでの天文学の歩みと、現在まで残されている謎が何であるかがよく判る良い本だと思う。(「眠れなくなる宇宙の話」佐藤勝彦、宝島社)
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マーク・アレン サイン トライアスロン・チャンピョン
前置きが長くなったが、これはトライアスロンの世界チャンピョン、マーク・アレンのサインである。上述の流れのなかで、少し面白そうだということで入手した1枚である。その世界では有名なビッグスターなのだろうが、残念ながら私には名前しか判らない。私がこれを所有することで、誰か本当に欲しいと思っている人の手に渡っていないのではないかと、少し後ろめたい気になったりする。
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北の後継者キム・ジョンウン 藤本健二
新書の強みというべきか、先日北朝鮮の後継者として指名されたばかりの「キム・ジョンウン」の本がもう出ているので ビックリだ。金正日ファミリーの料理人として北朝鮮の支配者階級の内情に詳しいことで知られ、よくニュース番組にも出ている著者の本だ。これだけタイムリーに刊行できたのは、本書が、これまで書かれた本の内容のうちからキム・ジョンウンに関係する部分をダイジェストして作られたものだからだろう。従って、このあたりに詳しい人、著者の本をすでにいろいろ読んでいる人には新しいものはないのかもしれないが、最近のニュースで知った「キム・ジョンウン」という後継者についもっとて知りたいという者には、こうした本は有難い。この本を読んだだけで、新しい後継者が世界や日本に対してどのような政策を取っていくのかを予想することは出来ないが、少なくともこれからの北朝鮮の動きを注視する際に重要な情報が満載であることは確かだ。(「北の後継者キム・ジョンウン」 藤本健二、中公新書)
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科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている 丸山茂徳
羊頭狗肉という言葉があるが、本書はちょうどその逆のような感じだ。題名にある人間のCO2排出を主因とする「地球温暖化」説への批判・反論は本書の最初の1章だけで、残りの3章は、著者自身の文明論の開示と「地球寒冷化」への警鐘、その危機を乗り越えるにはどうしたらよいかという話に終始している。「温暖化」に対する批判部分は、CO2排出による温暖化効果は事実だが、非常に瑣末なことで、それ以上に地球全体の寒冷化にどう対処していくかを考える方がはるかに大切である、というのが本書の立場だ。これから日本が石油の消費をゼロにしたとして、温暖化の抑制効果は、0.00002℃程度に過ぎず、それ以上に、宇宙線増加による寒冷化の方が大きな問題ということだ。例えば、ピナツボ火山の噴火によって観測された「地球寒冷化」は、これまで人類が排出してきたCO2総量による「温暖化」にほぼ匹敵するものだったという。また、宇宙から飛来する「宇宙線の影響や地軸の変動による「寒冷化」は予測できないものの、方向としては「寒冷化」に向かっている可能性が高く、その影響はCO2による温暖化をはるかに上回るものだという。さらに、CO2削減は、CO2を必要とする植物の生育を阻害し、寒冷化による食糧危機を助長する可能性さえあるとする。
こうした地球温暖化対策の愚を説いたあと、本書は、著者自身の文明論、歴史認識へと進み、最終的には寒冷化による破綻を回避するためには「世界統一政府」が必要であると説く。なお、寒冷化とは関係ないが、本書のなかで、宇宙から飛来する宇宙線量の変動が生物の進化の速度と関連しており、カンブリアの生物大爆発もそれで説明が可能になるだろうという記述があり、面白かった。(「科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている」丸山茂徳、宝島新書)
こうした地球温暖化対策の愚を説いたあと、本書は、著者自身の文明論、歴史認識へと進み、最終的には寒冷化による破綻を回避するためには「世界統一政府」が必要であると説く。なお、寒冷化とは関係ないが、本書のなかで、宇宙から飛来する宇宙線量の変動が生物の進化の速度と関連しており、カンブリアの生物大爆発もそれで説明が可能になるだろうという記述があり、面白かった。(「科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている」丸山茂徳、宝島新書)
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ジル・ペロー サイン NHL
NHLのかつての名選手、ジル・ペローのサイン。これだけの名選手のサインを何故まだ紹介していなかったのか不思議な気がする。おそらく、彼の名声の割には、残した成績がやや地味なので、紹介するのを後回しにしていたのかもしれない。彼のサインは、非常に丁寧で素晴らしい。これは昔の選手によく見られることで、このサインをみると、今の選手に見習って欲しいと強く思う。
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空想オルガン 初野晴
本書は、清水南高校吹奏楽部の部活動のなかでいろいろ巻き起こる大小さまざまな事件を、部員たちが解決していくというシリーズの3作目。前作までメンバー集めに苦労していた清水南高校の吹奏楽部だが、本書から、県大会予選・県大会・地区大会等、ようやく吹奏楽部らしい活動が始まった。私のような中年にとっては、吹奏楽部の活動の方はあまり興味が向かないのだが、そうしたマイナス要素を差し引いても本書のミステリー部分は面白いというか、話としてよく出来ていると思うし、登場人物のキャラクターとしての楽しさも味わえるので、つい読んでしまう。本書の中では「十の秘密」という作品が、なかなか凝っていていちばん楽しめた。(「空想オルガン」初野晴、角川書店)
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江戸のお裁き 河合敦
江戸時代の、裁判、刑罰といった司法制度の解説が中心の本書だが、内容はそれだけではなく、江戸時代の風俗や庶民の暮らしぶりなどに話が飛んだりしていて、雑学知識を得るという意味では大変面白い本だ。鼠小僧次郎吉、大岡越前守、遠山の金さん、鬼平犯科帳の鬼平などの有名人の実際の行状などは雑学として面白い。また、日米和親条約について、学校で習ったのは「治外法権」「不平等条約」という側面だけだった気がするが、その背景に当時の日本の刑罰があまりにも残虐すぎて「そんな法律で裁かれては適わない」とアメリカ人が恐れを為したという側面があったという記述も大変面白かった。江戸時代において、刑を確定する際に、どんなに物証といった客観的な証拠があってもだめで、とにかく自白を重視するという考え方があったというのも、今につながるような話で考えさせられる。さらりと読めるが意外と内容の濃い本だ。(「江戸のお裁き」河合敦、角川oneテーマ21)
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アリアドネの弾丸 海堂尊
田口・白鳥コンビが活躍する「バチスタ」シリーズの第5巻。このシリーズは偶数巻が幕間的な話、偶数巻で大事件が勃発という傾向があるように思われる。奇数巻の本書では、文字通りの大事件が勃発。絶体絶命のように思える東城大学病院の危機を、田口・白鳥コンビが辛うじて乗り切るというスリルのある展開だ。先日、別シリーズの「ブレイズメス1990」を読んだばかりだが、その「ブレイズ‥」のなかでは正論で上司にたてついていた高階医師が、本シリーズでは海千山千のたぬき親父のような病院長になっている。「ブレイズ‥」を読んだばかりなので気がついたのだが、本書のなかにはごくさりげなく「ブレイズ‥」のその後を暗示するような場面がある。前にも書いたが、両シリーズがこれからどう繋がっていくのか、ますます気にかかるし、著者もそれを十分に意識して書いているようだ。
ミステリーとしては、真犯人のトリックをどう暴くのかがポイントだが、ミステリーの禁じ手とされるトリックを1つ使っているので、評価は分かれるかもしれない。私としては、その禁じ手、本書が医療ミステリーであるという点と、本シリーズへの愛着の強さから、それほどは気にならなかった。それよりも、謎が解き明かされた時の意外性の方に軍配を上げたい。なお、巻頭にこれまでの4巻ではなかった「病院の見取り図」が掲載されていて「あれ?」と思ったが、これも、最後まで読むとミステリーの重要な鍵になっていることが判って納得した。(「アリアドネの弾丸」海堂尊、宝島社)
ミステリーとしては、真犯人のトリックをどう暴くのかがポイントだが、ミステリーの禁じ手とされるトリックを1つ使っているので、評価は分かれるかもしれない。私としては、その禁じ手、本書が医療ミステリーであるという点と、本シリーズへの愛着の強さから、それほどは気にならなかった。それよりも、謎が解き明かされた時の意外性の方に軍配を上げたい。なお、巻頭にこれまでの4巻ではなかった「病院の見取り図」が掲載されていて「あれ?」と思ったが、これも、最後まで読むとミステリーの重要な鍵になっていることが判って納得した。(「アリアドネの弾丸」海堂尊、宝島社)
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