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白銀ジャック 東野圭吾

この10月5日に創刊したばかりの実業之日本社文庫の第1回配本の中の1冊。創刊号だけに興味深い作品が並んでいるが、その中でも目玉といっても良い作品が本書だ。単行本の文庫化ではなく、文庫書き下ろしというのが売りで、確かに著者のような人気作家の文庫書き下ろしというのは大変贅沢な企画だ。どのくらい売れているのかまだ判らないが、私が買った本屋さんは、3ヶ所で文字通り山積みになっていて、買うのが少し恥ずかしかった。
内容は、スキー場がハイジャックされるというショッキングな事件を追う、サスペンス調のミステリー。ストーリーは一直線、ほとんど悩むことなく一気に読めてしまう。人物の視点をいくつも変えながらストーリーの同時進行で読ませるという手法が多い中で、こうしたシンプルな展開は、読むほうにとっては大歓迎だ。最後のあっと驚く真相だが、作者に挑戦して「当ててやろう」と立ち止まることもなく読み切ってしまったので、自分自身当てられたかどうかは判らないが、多分立ち止まって考えたとしても当てられなかっただろうと思う。言われてみれば非常に合理的な結末だが、まさかという読者の思い込みを上手く突いている。少し前の軽いノリの東野作品という感じがするが、お買い得作品であることは間違いない。(「白銀ジャック」東野圭吾、実業之日本社文庫)
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