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遠くの声に耳を澄ませて 宮下奈都

以前読んだ「スコーレNO.4」がすごく面白かったし、次に読んだ「誰かが足りない」も大変良かった。自分にとっては信頼のおける作家だ。たまたま本屋さんで見かけたので読んでみた。「スコーレNO.4」の直後に書かれた初期の作品とのこと。「スコーレNO.4」のような鮮やかな印象の作品ではないが、読んでいると、「いい小説だなぁ」という充実感がじんわりと湧き上がってくる。形式は、それぞれの短編の登場人物が微妙に重なっている連作短編集。どのように重なっているのかは、紙に書き出してみないと整理できないほど微妙だ。読み進めていて、登場人物がいくつか重なっていることは判ったが、読み終えてから解説を読むと、そこに重なり具合がまとめられていて、そんなに重なっていたのかと驚かされる。ここまで微妙だと、著者が読者に対して気づくことをどの程度期待しているのかも微妙な気がする。1つ1つの短編については共感できる度合いも違うし、好き嫌いもある。個人的には、最初の1篇と最後の1篇が特に良かった。(「遠くの声に耳を澄ませて」 宮下奈都、新潮文庫)

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まほろ駅前番外地 三浦しをん

話題作だった「まほろ駅前多田便利軒」のスピンアウト作品とのこと。「多田便利軒」は、面白いことは面白かったが、世の中で騒がれるほどには感じなかったので、自分の感想とのギャップがずっと気になっていた。本書を読むことで、その理由のようなものが少し判るかもしれないなどと思いながら読んでみた。前作で脇役だった人物の視点で書かれている話などが収録されていたり、題名が「番外地」となっているので、確かに表面的には「スピンアウト作品」と言うのが正しいとは思うが、本編の主人公を中心として話が進むなど、内容的には明らかに続編というものもあって、この世界のなかで本作品が「スピンアウト作品」とは言いがたい重要な一部分を形成しているようにも思われる。(「まほろ駅前番外地」 三浦しをん、文春文庫)

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教授の異常な弁解 土屋賢二

著者の本はこれで何冊目だろうか。前の作品を読んだ際、これでようやく一段落で、次からは自由勝手にこれまでの作品をチョイスして読めるという感想を書いた。そうした気分で選んだ最初の本が本書である。自由に選んで良いといっても、著者の作品は題名から内容を想像することは難しい。題名自体が適当に付けられている感じだし、どんな題名でも結局は同じような内容だからである。またどれを読んでも期待通りの面白さだという安心感もある。ということで、それこそ本当に最初に適当に選んだのが本書だ。読んだ感想といえば、それこそ期待どおりにいつもの調子、いつもの内容で、いつもの面白さだったというのが感想の全て。ただただ、読んでいる時間が楽しい読書というのは、少し疲れている時などは有り難いものだと痛感する。(「教授の異常な弁解」 土屋賢二、文春文庫)

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