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ウィンター・ホリデー 坂本司

宅配便で働く元ホストの主人公とその息子の心の交流を描いたシリーズの2作目。小学校が休みの時だけ一緒に暮らす親子という設定で、前作は夏休み、本作は冬休みということだが、丁度その時期が宅配便の人にとっての繁忙期というのが面白い。本書を読むと、宅配便の人に会った時に、何となく「ご苦労さま」とか「ありがとう」と声を掛けたくなる。(「ウィンター・ホリデー」 坂本司、文春文庫)

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人魚の眠る家 東野圭吾

脳死に関する問題提起の一冊。ミステリー要素は少ないが、この後どうなるのかが気になって一気に読ませてしまうストーリーは圧巻だ。最後の結末も感動的で、やはり作者ならではの作品という気がする。SFでもサスペンスでも、作者の手にかかると期待以上の満足感を味わえるのは間違いないが、それでもやはり、何作かに1作は本格的なミステリーを読みたいと贅沢な期待をしてしまう。(「人魚の眠る家」 東野圭吾、幻冬舎)

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お経のひみつ 島田裕巳

著者による仏教に関する解説本は既に何冊か読んでいるが、本書は「お経」というものに焦点をあてて、かなり詳しく解説してくれている1冊。奈良にある有名なお寺、南都六宗のお寺は、お寺がお葬式に関わるようになる前のお寺であり、お墓はないし、お葬式も執り行わないという。確かにそういえばそうだなぁということで、色々な豆知識が満載だ。「般若心経」「法華経」となじみのあるお経の仏教史の中での位置づけなども、読んでいて大変ためになる。一般人としては、ここまで詳しい知識は必要ないというレベルの話も多いが、それを読んで心や記憶に残るものが大切だという、こうした啓蒙書のお手本のような1冊だと感じた。(「お経のひみつ」 島田裕巳、光文社新書)

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惑星カロン 初野晴

シリーズ5作目。当初の吹奏楽部の全国大会出場を巡る話は、もうどこかへ行ってしまった感じだが、短編一つ一つが色々工夫されていて面白いので、まあいいかという感じだ。その謎に関係するエピソードの多様さには特に感心させられる。ただ、ミステリーの要素が薄れ、本筋からも離れて、登場人物個人個人の物語になっていってしまうのは、このシリーズが無条件で好きという読者には良いかもしれないが、そうでない純粋にミステリー要素が好きだったり話の展開が楽しみという読者には、これ以上はややきついかもしれない。(「惑星カロン」 初野晴、角川書店)

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ラオスにいったい何があるというんですか? 村上春樹

著者の軽めの紀行文が年代順に並んでいる。最初の1篇が書かれたのが1995年ということでさすがにそこまで古いと読む気が薄れてしまうが、それ以降の文章は大体7年くらいの前からものなので、楽しく読むことができた。アメリカのNY・ボストンといったメジャーなところの文章は、普通の軽めの紀行文という感じで、著者ならではのものや特筆すべき内容は見当たらないが、アイスランド、フィンランド、ラオスといったマイナーなところの文章は、すぐにも行きたくなってしまうような魅力ある文章が続く。特にアイスランドの鳥のコミカルな話やラオスの何もないところの細やかな描写には心を大きくゆすぶられた。(「ラオスにいったい何があるというんですか?」 村上春樹、文藝春秋社)

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ワーキング・ホリデー 坂本司

予想とは違って、ミステリー要素の全くない完全なお仕事小説プラスハートウォーミングストーリーだった。宅配便の仕事をする主人公とその息子の夏休み中の交流というベタな設定だが、何となく楽しく読むことが出来た。生活になじみが深く、毎日のようにお世話になっている「宅急便を題材に選ぶというのが、作者の目の付け所の良さなのだろう。続編が既に出ているようなので、あまり間隔を開けずに読んでみようと思う。(「ワーキング・ホリデー」 坂本司、文春文庫)

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