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交換殺人はいかが 深木章子

軽い短編ミステリーはそれこそ数多いが、本書をチョイスした理由は、本書の副題が「じいじと樹来とミステリー」となっていたことだ。孫に「じいじ」と呼ばれ、外出先で「じいじ」と呼ぶ声がすると、つい振り向いてしまう。世のなかの孫を持つ人間にとって「じいじ「ばあば」という言葉は、その題名をみただけでその本が欲しくなってしまうほどインパクトのある言葉のような気がする。話の内容はかなり本格的なミステリーでそれだけでも楽しいのだが、恐らく作者にも可愛い孫がいて、作者が本当に書きたかったのは「じいじ」と孫の交流の方だったような気がする。(「交換殺人はいかが」 深木章子、光文社)

 

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かがやき荘アラサー探偵局 東川篤哉

著者の新刊本を本屋さんで見つけた。題名をみると、また新しいシリーズのようだ。著者の作品は見つければすぐに読むことにしているが、既にいったいいくつシリーズがあるのか判らなくなってしまっている。こんなにシリーズが増えていく理由は、著者が人気ナンバー1の作家だからという理由だけではないような気がする。アイデアが先にあってそれにふさわしい舞台を作るためにそれをシリーズ化するという著者独特の製作上の理由があるとか、出版社と作家の契約上の問題といった商業上の理由があるとか、何かがあるような気がする。そうしたことはともかくとして、本書を見つけ、また新しいシリーズかと思いつつ、題名からユーモア短編ミステリーであることは判るので、安心して読み始めた。読み終えた感想は、やっぱり著者の本は面白いなぁという一言だ。ミステリーの要素は、初期の頃の作品に比べて若干弱くなっているようだが、その分ユーモア小説の面白さに磨きがかかっているように思える。また一つ楽しみなシリーズが増えた。(「かがやき荘アラサー探偵局」  東川篤哉、新潮社)

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リプレイ ケン・グリムウッド

海外ミステリーをたくさん読んでいる人に「最近出たハリー・オーガストも良いが何と言っても本書がすごい」と薦められて読んだ一冊。かなり高いハードルを設定して読みだしたが、最初からはまってしまった。持病の治療のために通っている病院に行く前に読み始めてしまい、治療後に安静にしていなければならない時間にも読むのをやめることができずに困った。最初の数ページで、主人公は43歳から18歳に逆戻りする。その逆戻りする年齢、逆戻りした時代が何とも絶妙で、胸にジンときてしまう。もし、自分にそのようなことが起きたら、役に立つ知識や記憶はどのくらいあるのだろうかなどとつい考えてしまう。競馬の知識が全くないので勝つ馬をあてて大儲けはできそうにない。唯一使えそうな記憶は「無敗の3冠馬シンボリルドルフ」というフレーズくらいだと思う。これならば3冠馬になるまでのシンボリルドルフの馬券を買い続ければ大儲けができそうだ。しかし、逆戻りする時代がシンボリルドルフの前とは限らないし、競馬ファンでない自分の知っている馬ならば強いだろうという程度の知識では、普通の人とほとんど変わらない成果しか上げられないだろう、などと色々考えてしまうのだ。本書は、中盤以降も、思いがけない展開が続き、最後の大団円へと至る。読み終えて、今年読んだ本のベスト1だと思った。(「リプレイ」 ケン・グリムウッド、新潮文庫)

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