戦争、とくに侵略や侵攻は即座に決定されるものではないだろう。特に近代の国家総力戦となれば、それなりの用意や準備に一定の時間が必要であろう。
最近のプーチンのウクライナ侵攻は、かなり前から、いや動機や目的で言えば、プーチンが最高権力者に成った時からウクライナ侵略と大ロシア構想を決めていた気がする。
話を近現代史に持って来ると、あの「真珠湾奇襲」は何時頃から決定していたのだろうか。
当時の駐日大使のグルーは「東京では・・・大挙して真珠湾を奇襲する計画を立てているという意味の噂が盛んにおこなわれている」と1941年1月27日に米国政府に報告している。真珠湾攻撃のおよそ一年前である。
作家の永井荷風は「9月3日、日米開戦の噂しきりなり。新聞紙上の雑説、殊に陸軍情報局とやらの暴論の如きは馬鹿々々しくて読むに堪えず。」と日記に書いている。既に三ヶ月前に開戦のことが新聞に書かれていたようだ。
ハタと気が付いたことがあった。9月3日と云えば、大本営政府連絡会議の日であり。そこで、「帝国国策遂行要領」が作成され、「国は自存自衛を全うするため…戦争辞せざる決意のもとに概ね10月下旬を目途とし、戦争準備を完整す」と9月6日の御前会議へと決定されていく。無論、当時は秘密の裡に決まるのだが。
たぶん陸軍情報局から各新聞社にリークしたのだろう。「戦争」感を社会に広めて、国民を「戦争」感覚に麻痺させていくのではないか。
現在の時代に置き換えて、同じようなことがやられていないか。反撃能力に関することが一部の好戦的な自民党議員たちから、単なる予算倍増が公然とリークされ、飼い慣らされたメディアがこれを報ずる。まるで嘗ての大本営報道のように。
国民はウクライナで「防衛」という幻想に縋りつく。やがて「防衛」が「戦争」へと姿を変える。
プーチンやトランプが出れば、この國も動き出す。見回せば、プーチン候補がいるのではないか。
【参照文献:グルー『滞日十年』、永井荷風『断腸亭日乗』、『杉山メモ』原書房】
古くて、如何にも真実が詰まっていそうでしたが、目が悪くなり、とうとう新刊を買いました。
読み易いです。活字も消えていないし、線も引き放題です。
本はペットのようにぐちゃぐちゃに触って可愛がってあげるものです。