わたしたちの教科書
衝撃の事実が明らかにされて、物事は一気に解決
前半は緊迫していましたけど、後半はもうちょっとまったりしていて、
もう少し丁寧に描いて欲しかった印象があります。
まず、兼良を人質にとったオトヤ君の主張
「これから僕がこの学校のいじめを解決します。この世界を支配している
のは暴力だ。世界は怒りと憎しみに満ち溢れている。僕がそれを証明する。
こいつを殺して。世界の真実を証明する」
言ってることが全うなのか、それともイカレているのか、ちょっと判別しにくい
言葉ですけど、個人的にはこのオトヤ君がなにゆえにこういう意識を
持ち始めたのか知りたかった・・・
あの雨木副校長の下でどのようにしたら彼のような青年が出来上がるのか、
そこらへんをもっと細かく描いて欲しかったです
(なんせ、出てきたのが後半、しかも刑務所ですから・・・過去のいきさつが
わかりにくいのは事実ですよね)
確かに加地先生の言うように「誰にも裁くことは出来ない。そんな事
望んではいない」という事なんですけど、『暴力』でしか解決の糸口が
ないと信じ込んでいくこの青年の気持ちも・・・ちょっとわかります
一方、明日香の友人・・親友だった友美ちゃんは、自分と兼良が付き合って
いた事を告白。偶然見てしまった兼良の父親の援助交際・・それが
きっかけでいじめを受けるようになり、自殺しようとした時に明日香が
止めに来たことに対し、「じゃあ変わってよ。代わりにいじめられてよ」と
言ってしまった・・・・(なんてむごい話でしょうか)
明日香は「いいよ」と言うのです。
この時点で明日香は「生きる」事に執着しています。
何があっても死んではいけないと思っています
それはいわゆる教室の窓から転落した日もそうで・・・・
またも死のうとした友美を助けようと、一緒に窓枠に座って
「どんな人にも、世界中のどんな人にも生まれた時からいる。
(死んだら)悲しんでくれる人がいる。行き続ければいつか必ず気づく。
きっと励ましてくれる。だから死なないで。死んじゃだめだよ。
生きてなきゃだめだよ」と説得するのです。
そう「死んじゃだめだよ。生きてなきゃだめだよ」という台詞は、珠子が
兼良に言った台詞と同じですね。
ここに来ても明日香の「生」に対する思いは強くて
それだけに、まさか足を滑らせて転落するとは・・・・(もう号泣)
そんな・・・そんなのってあんまりじゃないのーー あんなに生きたがってた
少女が・・・
けれど、その少女の「死」をきっかけにして、学校に「いじめ」があるという
問題提起が出来て、あれほどまとまりのなかった先生達が心を一つに
出来て、ポーちゃんを自殺から救うことが出来て・・・
そういう意味では、明日香の「死」は決して無駄ではなく、まさに彼女が
言っていた「世界を変える事が出来る」出来事だったのではないでしょうか。
結局、裁判では「学校にいじめがあって安全監督責任は問うが、少女の
死といじめには何の因果関係も認められない」と結論が出ました
いわゆる「敗訴」なのかもしれません。
けれど、前述したように「学校」という社会が、明日香の死をきっかけにして
「いじめ」についてきちんと考え、対応していこうという前向きな姿勢を
取る事が出来るようになったわけですから、あながち負けではないのかも。
その後、雨木副校長は不登校の子供に対するボランティア活動をして、
友美ちゃんはフリースクールへ・・・
証言を終えた途端、精神の糸が切れたようになっていた彼女も、
幼い頃に遊んだ場所で明日香が書いた文章に涙を流します。
「私がここで止まったら明日の私が悲しむ。私が生きているのは今日だけ
じゃないんだ。昨日と今日と明日を生きているんだ。だから明日香、死んじゃ
だめだ。生きなきゃだめだ。明日香、たくさん作ろう。思い出を作ろう。
沢山みよう。夢を見よう。明日香。私達は思い出と夢の中に行き続ける。
長い長い時の流れを中を行き続ける。時にすれ違いながら、時に手を
取り合いながら、長い長い時の流れの中を私達は行き続ける。
いつまでも」
この文章を読んで、再び友美ちゃんが人間らしい感情を取り戻して
強く生きていくことを信じたいです。
このドラマはいわゆる「いじめ」を内的に取り扱ったドラマではなかったです。
なんていうか「いじめ」という問題を通して、それぞれが問題意識を持つ事が
必要だと言っているんですよね。
最後は、「負けずに行き続けて欲しい」という、定番のメッセージを
伝える話になりましたけど、「隠蔽」する事が正義だと思い込んでいる
今時の教育者達には衝撃のドラマになった筈です
そういう意味では非常に秀作だったのではないでしょうか?