昨日は私が昔から開いているヅカファンのオフ会で月組を観劇いたしました。
観劇後はお食事会だったのですが、「アルジェの男考」でかなり盛り上がりました。
例えば・・・
アルジェ時代のジュリアンとサビーヌは何歳でどこまでの関係だったのか
もし自分がなるとしたらサビーヌ、エリザベート、アナ・ベルの誰がいいか
何でアナ・ベルは自殺し、アンリはそれを止めなかったのか
など等・・いやーー妄想が広がる舞台で。柴田作品ってこんなに多くを語れる作品だった
のですね。初演を見た方は「懐かしい。全部一緒に歌ってた」と喜んでいたし、何度も
みたくなる作品であったと 脚本家冥利ですよねーー
という点をふまえていきましょう。
アルジェの男
脚本について
若い人がみたら、延々とジュリアンのあっちの女、こっちの女と手玉に取る様子を
みせられ、挙句に銃で一言も言い残さず死んで幕・・・というのは理解しづらいものが
あると思います。
でも、そこが「昭和の作品」ならではなんですね
「不条理劇」というのがありますが、「アルジェの男」はまさにそれ。
幕切れに観客はふいをつかれ「え?」と思います。何で?何でこんな終わり方なの?
・・・それから後の話は観客自身にお任せしますっていう展開なんですね
今時の何でも白黒つけて結末をはっきりさせる作り方に比べると余韻は残るけど
疑問も残る。何となく不完全燃焼。納得したくてもう一度見る。ついでに見る・・また見る。
みたいな事を柴田先生が狙っていたんだとすれば、それはそれですごいです
柴田作品に出てくる男というのは決して「いい人」ではありません。
女を利用する
身勝手でわがままで感情的
っていうのが大体ですから、演じる方は最初に「嫌悪感」「理解できない」感を持つと
思います。今回のジュリアンの役作りにあたっては霧矢も悩んだでしょうね。
なんせ彼女の性格とは対照的すぎて、もはや想像すら出来ない役ですから。
でも、そんな役柄を昭和のスターさんたちは「自然に」「悪い男だけど愛してしまう」
という風に演じていたのですからすごい。
つまり柴田作品の男というのは、頭で演じてはいけないんです
その役になりきって生きていかないと・・・そこが頭脳プレイの霧矢とは相容れなかった
なあと。
ジュリアンはアルジェでワルのトップ。ライバルはジャック。彼女はサビーヌ。
素直じゃなくてかっこつけで強がりの彼がボランジュ夫妻とであった事で人生が一変。
なにゆえ彼はボランジュ夫妻を受け入れたのか
それは愛着障害を引き起こしていた彼に生まれて初めて『無償の愛」と「道をさし示す
父性愛」を感じたからなのでは?
もし、ジュリアンが少しでも「高貴」な血筋が入っていたら、たとえワル出身でも、
ボランジュ府愛の元で誠実に仕事をしてエリザベートと結婚するか、あるいは、
サビーヌを呼び寄せて身分違いの結婚をするか・・・という話になったでしょうが、
残念ながらジュリアンは根っからの「下層階級」の人間
ゆえに「野心」ゆえに人を傷つけても罪悪感を持たない、ある程度で満足すれば
いいのに、あれもこれもと手を広げて他人を不幸に落としいれ、また自分をも破滅
させてしまう。
パリでサビーヌと再開し、ジャックと一緒になっている姿を見た
→ (高貴)ジュリアンならサビーヌを救おうと奔走する
→ (ワル)ジュリアンだからあえてサビーヌをほったらかしにする
エリザベートを振り向かせようとする
→ (高貴)ジュリアンならプライドがあるからあえてそれ以上近づかず、サビーヌを
何とかしようと考える
→ (ワル)ジュリアンだから、プライドの高い女を振り向かせる事に夢中になり、結果
アナ・ベルを死においやる → 自分の破滅の布石を打った
ジャックの問題について
→ (高貴)ジュリアンなら社交界で自分の過去を明かし、信義を問うか、あるいは
ボランジュ夫妻やシャルドネ夫人やミシェルに助けを求める
→ (ワル)ジュリアンだから、他人を信用出来ずに自分だけの力で解決しようと
もくろむ。しかも短絡的に。
サビーヌがジャックを殺した件
→ (高貴)ジュリアンなら自らが罪を被って出頭するか、あるいは二人で死を選ぶ。
→ (ワル)ジュリアンだからその場限りの感情を抑えられずに出奔
とまあ・・こんな風に感じたんですが 人が育つ環境も重要なこと。でもその上に
血筋というDNAがもたらす性格形成についてこんなに考えた事はなかったわ。
どちらにしても柴田先生はジュリアンという不完全な男の短くも悲しい一生を通して
「永遠に手が届かない世界」があるという事を描いたのかな。
3人の娘達の誰になりたい?
って聞かれて・・・最初は「アナ・ベル」と答えたのですが、いくらなんでも年齢的に
無理があるし。あ、そうだ。私だったら「ボランジュ夫人」になりたいわと答えました。
大体、みんな「アナ・ベル」になりたいと答えるのねーー
エリザベートは論外でサビーヌはヒロインとして中途半端って事でしょうか。
じゃあ、なぜジュリアンと一夜を過ごしてしまったアナ・ベルが死を選んだのか。
当時の貞操観念を考えると、初めての男性=結婚相手の筈なのに、早々に
ジュリアンがエリザベートに愛を告白しているシーンに遭遇。
一瞬にして「騙された」と悟ったのかもしれません 自分に対して「嘘」をつく人が
この世にいるとは・・・それが一番信頼していたジュリアンだったとは・・・
恥ずかしさと愚かさと悲しさと・・数々の不幸に会いながらも誠実に聖女のように
暮らしていた彼女が始めてしった「悪」だったんですものね。
(ゆえにここでアンリが男としてアナ・ベルに告白するなり押し倒すなり・・・?)
私がボランジュ夫人になりたいのは夫が寛容だし出世しているし?ゆえに娘の
婿にはミシェルを選びまわすわ
出演者について
霧矢大夢・・・ジュリアン。欠点はありません。何もかも完璧。でもジュリアンは完璧な
人間ではないし・・イマイチ、ジュリアンの感情が伝わって来なかったなあと。
雰囲気的に霧矢は人生をあんな事でダメにするようなタイプに見えず。
かといって役作りでもはや『殻を破りました」ともいえないんでしょう・・・
時間が必要かも。私がアナ・ベルでマリコさんがジュリアンだったら、もう
何をされてもいいわーーって思えるんだけど。今回は妄想が広がらず。
蒼乃夕妃・・・サビーヌ。つくづく蒼乃という人はヒロイン向きではないと。ダンス力は
ものすごくあるけど、下町の酒場の女がどこまでも似合うって。トップと
してどうなのか また、毎回思うけど、彼女のかつらは嫌いです。
龍真咲・・・ジャック。昨日見た友人の話ではジャックは死ぬ時「穏やかな表情」を
していたそうで、一瞬にして『萌え」たんだそうです
まあ、あそこまで演じられたらいいんじゃないかと。書き込みの少ない役だけに。
明日海りお・・・・アンリ。おいしい役どころですよねーー
なんていうか、こういう穏やか
で一途なのが明日海の持ち味なんでしょう。踊らなければ完璧。
彩星りおん・・・エリザベート。高ピーな役どころをしっかり演じていましたが、ビジュアル
が今一つかなあ。
花陽みら・・・アナ・ベル。可憐さでは昭和スターに負けると言われておりましたが、
正統派娘役という感じで先が楽しみですね。
他には組長夫妻が何と言ってもピカイチ!花瀬みずかは相変わらずお綺麗で