いつかこの日が来るのはわかっていました。
いましたけど、ショックです。昭和を彩った大俳優の死が一ヶ月も経過してから伝えられるなんて。
俳優の田村正和氏 死去
4月3日心不全のため
享年77歳
今時、77歳なんて十分現役でいける年齢ではありますが、田村さんの場合、声が出なくなっていたんでしたよね。
私達世代にとって田村正和氏は、いつでもどこでも出演している俳優さんの一人でした。
阪東妻三郎の息子として非常に恵まれた立ち位置ではあったと思いますが、私が覚えている限り、結構単発ドラマの犯人役みたいなのが多かった気がします。
だから何となく顔は知っていましたが、名前までは・・・というのが最初の印象。
そんな私に強烈な印象を残したドラマが1977年の「鳴門秘帖」です。
彼の法月弦之丞はとにかくかっこよかった・・・細身で長身。しかもかつらがよく似合い。剣さばきが芸術的に美しい。さらにいうなら紫のアイシャドーが本当によく似合っていました。
私は彼に恋する「見返りお綱」のごとく、一目ぼれしてしまってすぐにファンになりました。
父は「ああ、坂東妻三郎の息子か」と言いましたが、その時は何のことやら。
彼の父、坂東妻三郎が偉大な昭和の俳優である事を知らなかったんですよね。
それから彼が出るドラマを色々探して見るようになりました。
次に大好きなのが「若さま侍捕り物帳」
市井に住む「若さま」が事件を解決していくお話なんですが、何度見てもかっこいいったらありゃしない。「鳴門秘帖」では無口できざな役回りだったけど「若さま」では、べらんめえな言葉遣いの侍で、闘う時だけ瞬時に代わるという役どころ。
その後はしばらく「土曜ワイド劇場」で犯人役が多かったなあと。
再び彼を主役クラスでみるのが「愛と死の絶唱」です。
大原麗子との共演でした。ストーリーは覚えていなかったけど原作は推理小説で、私は原作を買って読む程でした。
彼の時代劇の代表作は「眠狂四郎」だと思われますが、私は「乾いて候」の方だと思います。
「乾いて候」は将軍吉宗の庶子であり将軍の毒見役の腕下主水が、悲しい過去をひきずりつつも将軍の為に事件を解決していく話です。
ニヒルで女性に惚れられても決して心を許さない冷たい男。
けれど、剣さばきと立ち回りがどんな俳優よりも美しくかっこいい。身が軽いんでしょうね。ほれぼれしてしまうんです。
1980年代の「乾いて候」はニヒルな剣士だったけど、1990年代の「乾いて候」は非常に感情が豊かで涙を流すシーンが多かったのを覚えています。
「あの田村正和が泣いている」と思ってびっくりしたんですけど。
そして「パパはニュースキャスター」へ流れていくんですがこれって180度の方向転換で驚いた人も多かったと思います。
これが成功しなかったら時代遅れの時代劇俳優で終わっていたと思うんですね。
なんせあの田村正和が3人の子持ちで、いつも子供達にちゃちゃを入れられる役というので大ヒット。その後はトレンディドラマに乗っていったんですよね。
私は時代劇が好きだったので、トレンディドラマの彼をほとんど見てません。
ですから「古畑任三郎」が始まった時もどうしようかと思ったんですが、これは三谷幸喜の脚本の素晴らしさで長く続いてよかったです。
古畑との対決といったら奇跡的なSMAPとの共演を思い出します。
やっぱりあれが一番面白かったですね。
その後、は色々ドラマを見てましたが「国選弁護人」あたりから声が聞き取りづらいなと思い始めて、大丈夫か?と思っていたら・・・・
私にとっては青春時代に燦然と輝いた素晴らしい俳優さんの一人で、憧れでした。
彼を知ることが出来て本当によかったと思います。
プライベートを決して明かさない。余計なことは何も言わない・・そんな硬派な俳優さんも今はいないですよね。
「剣士」と言えば今や佐藤健なんでしょうけど、彼には田村正和の立ち回りを目に焼き付けて欲しいと思います。
まだまだ長生きしてほしかった・・・・残念です。
心からご冥福をお祈りします。