雪祭り
元来人ごみが苦手で、祭りの賑わいなどもどちらかと言うと好まない。
そんな私も妻の、思いつめたような願いに負けた。
およそ二十年振りの大雪が、小康状態になったと言う週間天気予報を見て、
出発の前々日に汽車の切符を手配した。
本州の中でも雪深い事で有名な地域から、列車を乗り継ぎ北海道札幌の雪祭りを見物に行こうと言うのだ。
乗り継ぎは妻がひっそりと調べていた。幸いな事に予約は取れた。
しかし、帰りに一泊を希望した、青森の温泉宿はどこも満杯だと言う。
そこで、急遽函館の宿の予約を依頼するという離れ業を試みる。
すぐに、予約が取れたので、切符を買い替える。
前日に切符を受け取り、当日の朝十日の六時に小雪のちらつく中、家を出発した。
妻の北海道への思い入れは、高校生になってからノルデックスキーを始め、
三年生になり倶知安での国体に出場することが出来た思い出の地だと言う事にもよるのだ。
その大会ではリレーの県代表メンバーに選ばれ、アンカーに抜擢された妻は、
大方の予想を裏切り、先輩が一位で引き継いでくれた差を、逃げ切り優勝の栄誉に輝いたと言う。
まして連れ合いが、今年早期退職をするなどと言い始めたものだから、
鉄道員の妻である内に、昔と同じ汽車の旅を満喫し、
思い出の地の北海道へ行きたいと考えたらしい。それも冬の北海道へ。
(続く)