遊爺雑記帳

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中国、矛盾する経済優先課題のリスク

2021-12-15 01:33:55 | 中国 全般
  中国の今年の中央経済工作会議の公式声明では、例年になく明確で、「安定」「着実」「安定化」という言葉が昨年の約2倍登場した。
 これは現状を踏まえると不思議なことではない。経済はますます減速していると、WSJ・ナサニエル・タプリン (Nathaniel Taplin)氏。
 
中国、矛盾する経済優先課題のリスク - WSJ 2021 年 12 月 14 日 By Nathaniel Taplin

 中国では毎年、最高指導部のメンバーが集まって中央経済工作会議を開き、今後1年間の経済の優先課題を決定する。10日に終了した今年の会議後に出された公式声明は例年になく明確で、「安定」「着実」「安定化」という言葉が昨年の約2倍登場した。

 
これは現状を踏まえると不思議なことではない経済はますます減速している。習近平国家主席が異例の3期目に向けて指名されることが見込まれ、指導部の他の人事が決定される重要な第20回共産党大会を、来年の秋に控えている。過去数週間には、拡張的な金融政策の推進と不動産政策の規制緩和に向けた明確な変化が見られていた。

 
今回の声明では、全地方政府関係者に対し、経済の安定化のための責任を負い、必要に応じて政策を前倒しするよう指示し、全般的に財政支出を迅速化することを求めた

 だが、
この声明は相反するシグナルも発している。そこに来年の中国の主な経済リスクがあるとみてよいだろう。

 
今回の声明では、成長の必要性を明確に訴えていることに加え、政府の簿外債務を断固抑制し、財政規律を守ることも求めている。米金融大手ゴールドマン・サックスによると、中国の地方政府は、土地売却収入(歳入の約30%を占める)が壊滅的な状態であることから、既に大きな財政的圧力を受けている。財政的な施策を行う余裕がなく、指導部からは相反するシグナルを受ける中、地方政府によるインフラ支出は押し上げ効果が不十分なものになるか、想定より遅れるリスクがあることは明らかだ。また一部の地方政府は、不動産開発大手、中国恒大集団の未完成プロジェクトを完成させる義務を負うことになり、さらに財政が逼迫(ひっぱく)する可能性もある

 そのため、
大きな希望は金融政策の緩和ということになろうが、こちらについてのシグナルはやや有望だ。今回の声明で、「安定したマクロ経済のレバレッジ」や、与信の伸びを基本的に名目GDP(国内総生産)成長率並みにすることを求める文言が省かれていることは注目に値する。いずれも、昨年の声明や最近中央銀行が出した声明で強調されていた点だ。より緩和的な金融政策は、地方政府による正式な債券発行(圧力を受けていない数少ない財政経路のひとつ)を支援するため、また、好調な不動産開発業者が経営体力のない業者から資産を取得するための資金を調達するのにも必要となる。

 
過去の緩和サイクルの基準に照らすと、中国の金利はまだ十分に下がる余地がある。7日物レポ金利などの主要な銀行間取引金利は年初来2%前後で推移しており、5年物国債の利回りは年央から約0.3ポイントしか下がっていない。2018~19年の緩和サイクルでは、これらの金利はいずれも約1ポイント低下したが、当時の経済減速の危険度は今よりも明らかに低かった。

 中国政府には現在の景気減速を乗り切る余地がかなりあるが、それは必要なことに関して現実的になることをいとわない場合の話だ。政治的なリスクを考えれば、おそらくいとわないだろう。だが、
中央指導部が今年、自らが決定した政策が不動産や電力分野に与えた影響に関してあまり考えていなかったことが露呈したことを踏まえると、警戒を緩めるのは時期尚早だ

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ナサニエル・タプリン (Nathaniel Taplin)
 WSJの経済および財務解説セクションであるHeard on theStreetの中国経済および政治経済学のメインコラムニスト

 今回の声明では、全地方政府関係者に対し、経済の安定化のための責任を負い、必要に応じて政策を前倒しするよう指示し、全般的に財政支出を迅速化することを求めた。
 だが、この声明は相反するシグナルも発している。そこに来年の中国の主な経済リスクがあるとみてよいと、ナサニエル・タプリン氏。
 この相反するシグナルは、そこに来年の中国の主な経済リスクがあるとみてよいと。

 米金融大手ゴールドマン・サックスによると、中国の地方政府は、土地売却収入(歳入の約30%を占める)が壊滅的な状態であることから、既に大きな財政的圧力を受けていると。
 したがって、インフラ支出は押し上げ効果が不十分なものになるか、想定より遅れるリスクがあることは明らか。また一部の地方政府は、不動産開発大手、中国恒大集団の未完成プロジェクトを完成させる義務を負うことになり、さらに財政が逼迫(ひっぱく)する可能性もあるとナサニエル・タプリン氏。

 そのため、大きな希望は金融政策の緩和ということになろうが、今回の声明で、「安定したマクロ経済のレバレッジ」や、与信の伸びを基本的に名目GDP(国内総生産)成長率並みにすることを求める文言が省かれていることは注目に値すると。
 緩和的な金融政策は、地方政府による正式な債券発行(圧力を受けていない数少ない財政経路のひとつ)を支援するため、また、好調な不動産開発業者が経営体力のない業者から資産を取得するための資金を調達するのにも必要となる。

 過去の緩和サイクルの基準に照らすと、中国の金利はまだ十分に下がる余地がある。
 中国政府には現在の景気減速を乗り切る余地がかなりあるが、それは必要なことに関して現実的になることをいとわない場合の話だ。
 だが、中央指導部が今年、自らが決定した政策が不動産や電力分野に与えた影響に関してあまり考えていなかったことが露呈したことを踏まえると、警戒を緩めるのは時期尚早だと、ナサニエル・タプリン氏。

 台湾への武力侵攻と共に、経済減速を抱える中国には眼が離せませんね。



 # 冒頭の画像は、習近平と李克強




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