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日本国内での原発産業の先行きが暗いことから、多くの技術者の方々の将来や、新しい技術者の育成などが憂慮される今日ですが、原発増設を打ち出している中国や韓国が、早速つけこんで技術や人材を狙って動き出しているのだそうですね。
原発の増設を目指す韓国と中国が、日本の原子力技術や研究者に触手を伸ばしている。東京電力福島第1原発事故の影響で、日本国内の原子力産業は低迷しており、海外へ活路を見いだしたい日本側の事情とも合致する。しかし、世界レベルの技術が海外へ流出することに懸念の声も出ている。(原子力取材班)
大阪府東大阪市の近畿大で3月末に開かれた日本原子力学会では、日本の企業や研究機関に加え、韓国で原発運営を手がける公営企業「韓国水力原子力」が初めてPRブースを設けた。電力の送配電を担う韓国電力公社が全株式を持つ国策会社だ。
「日本の技術者が海外で働くことは新しい見識を得ることにもつながり、素晴らしいことだ」。行き交う研究者や学生らに流暢(りゅうちょう)な英語で次々と声をかけていた同企業の趙賢済(チョウ・ヒョンジェ)主任研究員はこう話した。
学会関係者によると、海外の企業がブースを設けるのは、50年以上の学会の歴史の中で初めて。会場での物品販売が禁止されている以外は特に出展の条件はなく、会場での求人活動も可能だという。
韓国では昨年2月に古里(コリ)原発で全電源が失われる事故が起きたばかり。福島の事故後、日本は安全技術を高めており、趙氏は「日本の技術は大変優秀だ」と認める。
「韓国が喉から手が出るほど欲しい」(学会関係者)といわれるのが、使用済み燃料の再処理技術。核兵器に転換も可能なプルトニウムを取り出すこともできるため、非核兵器国では日本しか認められていない。韓国は米国との間で2014年にも改定される原子力協定でこの技術を導入し、独自の燃料を確保したい考えだ。
中国も日本の技術獲得に攻勢をかける。
海外への技術者派遣などを事業とする「国際原子力発電技術移転機構」(東京都港区)の関係者によると、東日本大震災以降、中国からの引き合いが相次いでいる。同機構には日立製作所や東芝のOBなど原発関連の技術者らを中心に、海外勤務を希望する登録者が約300人に上るという。
5月には中国の核関連協会からの要請で、日本の技術者ら約20人が中国の原発事情を調べるために派遣される。浙江省では核関連技術を集積させた工業地区を建設する計画があり、日本企業の誘致も進む。
急速な中国の原発増設には危うさが伴い、いったん事故が起きれば日本にも影響が及ぶことから、安全技術の移転に関しては歓迎する声もある。
調査団長でエネルギー総合工学研究所の松井一秋研究理事は「中国の原発市場にはビジネスチャンスがある。ただ、技術だけ奪われる危うさもあり、いいとこ取りがないように慎重に進めなければならない」と話している。
原発技術 人材引き抜き、後絶たず
大企業や中小企業の技術者が、好条件につられて韓国メーカーなどに引き抜かれ、技術流出につながるケースは10年ほど前から深刻化している。一部で訴訟にも発展したが、長引く景気低迷やリストラを背景に歯止めがかからず、産業競争力の低下につながりかねない事態に発展している。
「年収6千万円以上」「専属秘書や運転手付きの車を支給」-。韓国の電機メーカーは、破格の条件を付けて日本人技術者の確保を進めてきた。週末ごとに韓国メーカーに招かれ、アルバイトのような形で技術提供する技術者の存在が問題になったほか、今年1月には、韓国・サムスン電子が日本法人の代表取締役にソニーの元業務執行役員を抜擢(ばってき)し、衝撃を与えた。
韓国や中国企業が、経営不振に陥ったパナソニックやシャープなどの人材の受け皿になっているとの指摘もある。だが、すでに売上高や利益率で日本をしのぐ存在になったサムスン電子の関係者は「今は、日本人技術者だからといってすぐに採用しない。本当に質の高い人間しかいらない」と言う。実際、ノウハウを吸収するとすぐに解雇する“切り捨て”事例も報告されるようになった。
一方で、原発技術に関しては世界的に評価され、高い競争力を持つ日本。政府もインフラ輸出に力を入れるが、国を挙げて受注合戦を挑んでくる韓国や中国への人材流出は、こうした得意分野ですら乗っ取られかねない危険を抱えている。
遊爺は技術屋ではないのですが、もしも原発の技術開発に携わっていてテーマの途上にあったらどういう選択肢を選ぶでしょう。
①核廃棄物処理関連(含リサイクル)なら、国内の支援体制が希少になっても国内にとどまって続ける。
②国内で廃炉の為の技術開発に注力する。
③再稼働するものへの安全性向上に向けた技術開発に注力する。
④国内では技術開発環境がじり貧なので国外で途上のテーマへの取り組みを続ける。
⑤国外の新天地で新たな取り組みに挑戦する。
⑥海外への技術売渡は国益に反するので国内で転職する。
難しいところですが、携わっているテーマが途上にあるという前提下で、その結果を出すという願いが国内で継続できず、海外でなら優遇された環境で継続チャレンジできるという魅力を捨てきれるかは、円満退社や会社での閉鎖が前提となりますが自信がありません。
机上では、①②が考えられますが、自分が持つ技術と関係ないのなら技術屋の世界では、無謀な選択肢と言えるでしょう。海外で求められているのは①の技術のニーズが高い様ですが。
かつての電子業界を主流とした、アルバイトでの技術流出は、道義上考えられない行為ですし、何処の会社でも昔から禁じられている行為です。
しかし、最近のリストラで首を切られた場合は、おそらく機密保持契約はさせられるはずですが、同情に値します。企業の側でも、コア技術に係る人材を首にすることは稀でしょうし、首にする時は流出は覚悟の上のことでしょう。
働ける環境があるのに、海外に転出することは、考えられません。
日本の国としての原子力に対する姿勢が定まらない中、多くの携わっておられる技術者の方々の不安はいかばかりかと、お察しします。
その不安につけ込む中国や韓国。そんな姿勢の誘いに乗っても長続きはしないとは解っていても心は揺れ動くことでしょう。
政府も、技術者の確保や継続の為の若手の導入を口にはしていますが、「廃炉に向けても必要云々」との、後ろ向きの但し書き付きになりがちです。
①②の技術を実証して、世界では増えていく原発には欠かせない技術なので、グローバルなビジネス展開を図る。③についても代替えエネルギーの定着までの間、安全性への質の向上を進め、①②と併せて展開する。といった方針と、環境創りを進めるべきでしょう。
事故の悲惨な影響は、被害を受けて生活環境が一変し、人生設計を大きく狂わされた方々や、いまだに根本解消しない事故現場の仮設での当面のとり繋ぎ状況です。
先の衆議院選では、即時原発ゼロを掲げた勢力は壊滅状態でした。だからと言って原発を増やせとか、やみくもに急いで再稼働させろという声もありませんでした。
技術や人材の流出は、政府による国の方針の明確化がないことが、他国に付け込まれる隙を産んでいるのです。
ベトナム他、事故を経験した日本の技術がより安全性を高めることを期待して導入すると言ってくれている国があります。
安倍政権では、民主党の様な希望の空論ではない、現実を踏まえた方針を打ち出していただけることを願っています。
# 冒頭の画像は、汚染水の漏水があった地下貯水槽
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この花の名前は、シモバシラ
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