米中貿易戦争を背景に、台湾企業の「中国離れ」が進んでいるのだそうです。
米国の中国からの輸入商品の関税を上げる事への対策として、これまで世界の工場となっていた中国から脱出したり、新たに中国以外の地に工場を建設する動きが生じるのは当然の流れですね。
折しも、中国での人件費や不動産の高騰で世界の工場のメリットもなくなってきている。
その脱中国の動きが、中国経済低迷に拍車をかけ中国の覇権拡大の力を削ぐ。トランプ大統領がそこまで深読みしているかは不明です。
米中の覇権争いの一環の米中貿易戦争。台湾の脱中国政策。「Made in India」を国策に製造業の集積を急ぐインド。世界の工場は、中国からインドへ移ろうとしていると、ホンハイの動きを例に、姫田小夏さんが解説しておられます。
台湾企業の「中国離れ」が進んでいるのは、米国が中国からの輸入品の関税を値上げしているのが契機ですが、元々世界の工場になった魅力の人件費や用地価格が安価であった魅力が薄れてきていた背景もある。
特に、近年台湾併合への圧力を強めている習近平の脅威に対抗する台湾では、米中貿易戦争をチャンスととらえ、蔡英文政権が2019年1月から、「歓迎台商回台投資行動方案(台湾企業の台湾回帰投資行動を歓迎する計画)」を実施して中国本土に進出していた台湾の製造業を呼び戻そうとしているのだそうです。
鴻海(ホンハイ)の他にも、電子機器のEMS大手の仁宝電脳工業(コンパル)、光宝科技(ライトン)。和碩聯合科技(ペガトロン)、広達電脳(クアンタ)、台達電子工業(デルタ電子)、台郡科技(フレキシウム)など、6月末時点で台湾企業81社が大陸からの投資シフトを表明しているのだと。
台湾企業の投資シフトがこれだけ早いのは、「政府の打つ手の早さ」と、台湾製造業の最終的な客先は中国ではなく欧米だと言うこと。海外に進出した台湾企業の販売割合は、「第三国向け販売」が74.6%で、「現地向け販売」は20.7%なのだそうです。
ホンハイは、中国全土に30を超える生産拠点を持っているが、主要顧客は米アップルであり、その生産活動は主に米国向けなのだそうです。
米中貿易戦争の結果、台湾企業は中国から離れつつある。それは中国から製造業を奪おうとする米国の思惑にも添う。一方、ホンハイがiPhoneの新工場を稼働させるインドでは、「Made in India」を国策に製造業の集積を目指している。
台湾、米国、インドの利害が一致したサプライチェーンの変革が進められているのですね。
世界の工場中国に投資していたのは、台湾企業だけではなく、日本を含めた世界の多くの国の製造業。それらの国々の企業の、中国国内向け以外の製品は、台湾企業同様に、脱中国やチャイナプラスワンに迫られているのですね。
その新たな製品化拠点の移行先は、ベトナムなどの東南アジア諸国が挙げられていますが、やがては中国を追い抜くと言われる人口増を続けているインドが、政府の呼び込み政策もあり、有力候補となっているのですね。
世界の工場が、中国からインドへ移行するとの同様の見方の解説は他でも聞かれるようになっていますね。
インドが世界経済を救う? 2019年07月04日 | 大和総研グループ | 児玉 卓
米中貿易戦争が引き起こしている、脱中国、チャイナプラスワンの動きは、台湾、インドの受け皿政策推進とあいまって鈍化している中国経済に拍車をかけることとなりますね。
中国からの輸入製品の関税値上げで、米国内の消費者が高いものを買わざるをえなくなるという米国内のデメリットは、中国製品より安価な他国製品が輸入出来れば、そのデメリットは軽減される。
国共内戦で、日本と闘って疲弊していた国民党軍からロシアの支援を得て政権を横取りした中国共産党の建国70周年を祝うと言う中国。
毛沢東時代の独裁政権へり回帰を目指す習近平ですが、課題山積となってきていますね。
# 冒頭の画像は、深圳にある鴻海(ホンハイ)精密工業の中国製造子会社フォックスコンの工場
この花の名前は、ヤマトリカブト
↓よろしかったら、お願いします。
米国の中国からの輸入商品の関税を上げる事への対策として、これまで世界の工場となっていた中国から脱出したり、新たに中国以外の地に工場を建設する動きが生じるのは当然の流れですね。
折しも、中国での人件費や不動産の高騰で世界の工場のメリットもなくなってきている。
その脱中国の動きが、中国経済低迷に拍車をかけ中国の覇権拡大の力を削ぐ。トランプ大統領がそこまで深読みしているかは不明です。
米中の覇権争いの一環の米中貿易戦争。台湾の脱中国政策。「Made in India」を国策に製造業の集積を急ぐインド。世界の工場は、中国からインドへ移ろうとしていると、ホンハイの動きを例に、姫田小夏さんが解説しておられます。
iPhone工場が中国からインドに移る背景 なぜ台湾企業は中国を見捨てるのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) 2019/07/20 姫田小夏
iPhoneの組み立てなどを請け負っている台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、製造工場を中国からインドなどに移し始めている。米中貿易戦争を背景に、台湾企業の「中国離れ」が進んでいるのだ。アジアの製造業で起きている壮大なシャッフルについて、ジャーナリストの姫田小夏氏がリポートする――。
■中国全土に拠点を広げてきたホンハイが、台湾に戻ってきた
「台湾には100年に1回のチャンスが到来している」――台湾・高雄市の中小企業経営者・陳忠義さん(仮名)は興奮気味に話す。米中貿易戦争が長期化するという見通しから、大陸に進出した台湾企業が続々と戻ってきているのだ。
そのひとつが、シャープの親会社である鴻海(ホンハイ)科技集団だ。1988年に深圳で中国初のパソコン部品生産工場を稼働させて以来、中国全土に拠点を広げてきた。だが今春、深圳と天津で行っている通信機器やサーバー関連の生産設備の一部を台湾の高雄市に移転させると発表した。
高雄市の「和発産業園区」の公式サイトは、ホンハイの新工場は高度に自動化された1万2000坪のスマート工場であり、5月24日の段階ですでに手付金も指定口座に振り込まれていると伝えた。
こうした動きを台湾の人たちはどう受け止めているのか。筆者は陳さんに電話で話を聞いた。「100年に1回のチャンス」という話に続けて、陳さんは「大陸から台湾に企業が戻ってくれば、私の生まれ故郷の高雄市もこれから大いに発展しますよ」と声を弾ませていた。
■「産業も人も大陸にのみ込まれるのではないか」という不安
2000年以降、多くの台湾企業が中国に拠点を移し、台湾から輸入した電子部品をモバイルやパソコンなどの最終製品にして欧米市場に出荷するというサプライチェーンを構築してきた。その反面、高雄市では、稼働を停止した工場が続出、若い台湾人も雇用を求めて大陸を目指すという「空洞化」が進んだ。
高雄市のみならず、空洞化は台湾全体における長年の懸案だった。いま台湾市民を大きく支配しつつあるのは、「このまま行けば産業も人も大陸にのみ込まれるのではないか」という不安感だからだ。前出の陳さんのように「今後製造業の台湾回帰が進めば、経済は活気を取り戻し、就職難も解消し、住宅やオフィスの不動産需要も生まれ、台湾経済全体に好循環が生まれる」という声はよく聞かれる。
■台湾を「ハイテク・アイランド」として成長させる
台湾の蔡英文政権は2019年1月から、「歓迎台商回台投資行動方案(台湾企業の台湾回帰投資行動を歓迎する計画)」を実施している。その狙いは、米中貿易戦争をチャンスととらえて、中国本土に進出していた台湾の製造業を呼び戻すことだ。
計画では、「米中間の衝突は国際的なサプライチェーンを再編させ、従来の貿易秩序に衝撃を与えるもの」としたうえで、「投資回帰を促すことで、台湾を世界のサプライチェーンの中心にする」と謳っている。
台湾政府は大陸から回帰する企業に対し、最初の2年間の工業用地の賃料を無料とするほか、電力や工業用水の供給を安定化させるため設備増強を打ち出した。技術を持つ高度人材や生産ラインに立つ労働者などのスムーズな確保を進めるため、複数にわかれていた窓口もひとつに統一。資金調達については、台湾政府がイノベーション支援のために設立した「行政院国家発展基金」を母体として低利の融資を行う。
この計画のもうひとつのポイントは、立地を1カ所に集中させるのではなく、台湾全土に分散させる青図を描いていることだ。陳腐化した設備を、ただ移転させるのではなく、大陸で予定されていた最新設備の投資を台湾に振り向けさせることで、台湾を“ハイテク・アイランド”として成長させることを狙う。
■台湾の最終的な客先は、中国ではなく欧米
台湾経済部によると、6月末時点で台湾企業81社が大陸からの投資シフトを表明している。たとえば電子機器のEMS大手の仁宝電脳工業(コンパル)は米国向けルーターの生産の一部を戻した。光宝科技(ライトン)はサーバー向け電源装置の生産を拡大させる。和碩聯合科技(ペガトロン)、広達電脳(クアンタ)、台達電子工業(デルタ電子)、台郡科技(フレキシウム)など、台湾のIT機器メーカーも移転を進めている。
2019年末までの投資金額の目標は5000億台湾ドルだが、上半期だけで4000億台湾ドルに達しているという。台湾企業の投資シフトがこれだけ早いのはなぜだろうか。ひとつの理由は「政府の打つ手の早さ」だろう。さらに、もうひとつの理由として、台湾製造業の最終的な客先は中国ではなく欧米だったという点が挙げられる。
台湾経済部の発表によると、海外に進出した台湾企業の販売割合は、「第三国向け販売」が74.6%で、「現地向け販売」は20.7%だ。たとえばホンハイは、中国全土に30を超える生産拠点を持っているが、主要顧客は米アップルであり、その生産活動は主に米国向けだった。
■日系企業で起きた「中国離れ」と構図は同じ
台湾企業が「中国内販モデル」だったのであれば、「客に近いところ」での生産が最適となるため、回帰の必要性は低い。しかし、台湾企業の販売先は中国ではないことのほうが多いのだ。
ここ数年、大陸に進出済みの台湾企業では、人件費、物流費、用地代などのコストが上昇し、生産拠点としての中国の魅力は薄れていた。そこに米中貿易戦争が起きたことで、生産地移転の引き金を引いたとみることもできる。
これはかつて日系企業で起きたことに似ている。2012年の反日デモは、中国に進出していた日系工場の中国離れのきっかけになった。日中関係の悪化を契機に、工場の赤字に悩んでいた日系企業が「チャイナプラスワン」という活路を開き、東南アジアに出て行ったのだ。
ちなみに台湾経済部の調査では、有効回答2734社のうち15.8%に当たる432社が大陸(もしくは香港)から生産ラインの移転を検討しているという。移転先で最も多いのは東南アジアの49.2%、次いで台湾の41.8%だ。
■中国の製造業による“紅いサプライチェーン”の驚異
これまで台湾企業は委託生産加工などを中心に大陸の製造業を大きく下支えをしてきた。その関係は「兄」と「弟」の関係にも近い。しかし、2015年頃から大陸の製造業が力をつけはじめ、台湾の工場への発注が減り、大陸にある台湾系工場も熾烈な価格競争に巻き込まれるようになった。中国の製造業による“紅いサプライチェーン”の台頭が、台湾の製造業にとっての脅威になったのだ。
一方で、世界の製造強国を目指す中国は、台湾を“紅いサプライチェーン”に誘い込む。台湾企業は半導体や工作機械、ロボットに強く、また台湾人は言葉も生活習慣も近い――台湾は中国がさらなる技術導入を図る上で欠かせない存在なのだ。
それが最も顕著に表れたのが、中国政府が2018年2月に発表した「31項目の措置」である。その第1条には、「『中国製造2025』行動計画に参加する台湾企業には大陸企業と同等の政策を適用する」という文言があり、中国政府はハイエンドの製造業に投資する台湾企業を全面的にサポートするという。
蔡英文政権が「台湾回帰政策」の立案の検討に入った2018年10月は、米中貿易戦争の“開戦”からわずか3カ月後だ。その底流には、台湾を苦しめるようになっていた“紅いサプライチェーン”からの脱出があったのではないだろうか。
■ホンハイはすでにインドでiPhoneXSとXRの生産を開始
それでは台湾は、“紅いサプライチェーン”から離れ、“世界のサプライチェーン”に移れるのだろうか。台湾政府の首脳部には、すでに独自のサプライチェーン構築に向けた青図があるようだ。
5月15日に開催された「アジア政治経済景気展望研究会」で行政院政務委員の龔明鑫氏は、将来、国際分業体制は実質的な変化を遂げるだろうとし、「政府は回帰した台湾企業をアップグレードさせ、“非・紅色サプライチェーン”を形成する」と述べた。そのために「台湾政府は東南アジア各国の政府と折衝している」(経済日報)という。
それはベトナムやタイなどに南下した産業立地を、ハイエンドの製造拠点である台湾とつないでネットワーク化させようという構想だ。すでに中国から撤退した台湾企業は、ベトナムやタイ、インドなどに生産拠点を形成しつつある。たとえばインド紙「インディア・トゥデイ」は、ホンハイはすでにインドでiPhoneXSとXRの生産を開始しているのではないかと報じている。
米中貿易戦争の結果、台湾企業は中国から離れつつある。それは中国から製造業を奪おうとする米国の思惑にも添う。ホンハイがiPhoneの新工場を稼働させるインドでは、「Made in India」を国策に製造業の集積を急ぐ。
モバイルに見るサプライチェーンの変化は、中国製造業の衰退を暗示するだけではなく、壮大なシャッフルが起きているとみたほうがいいだろう。そこで台湾は漁夫の利よりも大きい果実を狙っている。
iPhoneの組み立てなどを請け負っている台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、製造工場を中国からインドなどに移し始めている。米中貿易戦争を背景に、台湾企業の「中国離れ」が進んでいるのだ。アジアの製造業で起きている壮大なシャッフルについて、ジャーナリストの姫田小夏氏がリポートする――。
■中国全土に拠点を広げてきたホンハイが、台湾に戻ってきた
「台湾には100年に1回のチャンスが到来している」――台湾・高雄市の中小企業経営者・陳忠義さん(仮名)は興奮気味に話す。米中貿易戦争が長期化するという見通しから、大陸に進出した台湾企業が続々と戻ってきているのだ。
そのひとつが、シャープの親会社である鴻海(ホンハイ)科技集団だ。1988年に深圳で中国初のパソコン部品生産工場を稼働させて以来、中国全土に拠点を広げてきた。だが今春、深圳と天津で行っている通信機器やサーバー関連の生産設備の一部を台湾の高雄市に移転させると発表した。
高雄市の「和発産業園区」の公式サイトは、ホンハイの新工場は高度に自動化された1万2000坪のスマート工場であり、5月24日の段階ですでに手付金も指定口座に振り込まれていると伝えた。
こうした動きを台湾の人たちはどう受け止めているのか。筆者は陳さんに電話で話を聞いた。「100年に1回のチャンス」という話に続けて、陳さんは「大陸から台湾に企業が戻ってくれば、私の生まれ故郷の高雄市もこれから大いに発展しますよ」と声を弾ませていた。
■「産業も人も大陸にのみ込まれるのではないか」という不安
2000年以降、多くの台湾企業が中国に拠点を移し、台湾から輸入した電子部品をモバイルやパソコンなどの最終製品にして欧米市場に出荷するというサプライチェーンを構築してきた。その反面、高雄市では、稼働を停止した工場が続出、若い台湾人も雇用を求めて大陸を目指すという「空洞化」が進んだ。
高雄市のみならず、空洞化は台湾全体における長年の懸案だった。いま台湾市民を大きく支配しつつあるのは、「このまま行けば産業も人も大陸にのみ込まれるのではないか」という不安感だからだ。前出の陳さんのように「今後製造業の台湾回帰が進めば、経済は活気を取り戻し、就職難も解消し、住宅やオフィスの不動産需要も生まれ、台湾経済全体に好循環が生まれる」という声はよく聞かれる。
■台湾を「ハイテク・アイランド」として成長させる
台湾の蔡英文政権は2019年1月から、「歓迎台商回台投資行動方案(台湾企業の台湾回帰投資行動を歓迎する計画)」を実施している。その狙いは、米中貿易戦争をチャンスととらえて、中国本土に進出していた台湾の製造業を呼び戻すことだ。
計画では、「米中間の衝突は国際的なサプライチェーンを再編させ、従来の貿易秩序に衝撃を与えるもの」としたうえで、「投資回帰を促すことで、台湾を世界のサプライチェーンの中心にする」と謳っている。
台湾政府は大陸から回帰する企業に対し、最初の2年間の工業用地の賃料を無料とするほか、電力や工業用水の供給を安定化させるため設備増強を打ち出した。技術を持つ高度人材や生産ラインに立つ労働者などのスムーズな確保を進めるため、複数にわかれていた窓口もひとつに統一。資金調達については、台湾政府がイノベーション支援のために設立した「行政院国家発展基金」を母体として低利の融資を行う。
この計画のもうひとつのポイントは、立地を1カ所に集中させるのではなく、台湾全土に分散させる青図を描いていることだ。陳腐化した設備を、ただ移転させるのではなく、大陸で予定されていた最新設備の投資を台湾に振り向けさせることで、台湾を“ハイテク・アイランド”として成長させることを狙う。
■台湾の最終的な客先は、中国ではなく欧米
台湾経済部によると、6月末時点で台湾企業81社が大陸からの投資シフトを表明している。たとえば電子機器のEMS大手の仁宝電脳工業(コンパル)は米国向けルーターの生産の一部を戻した。光宝科技(ライトン)はサーバー向け電源装置の生産を拡大させる。和碩聯合科技(ペガトロン)、広達電脳(クアンタ)、台達電子工業(デルタ電子)、台郡科技(フレキシウム)など、台湾のIT機器メーカーも移転を進めている。
2019年末までの投資金額の目標は5000億台湾ドルだが、上半期だけで4000億台湾ドルに達しているという。台湾企業の投資シフトがこれだけ早いのはなぜだろうか。ひとつの理由は「政府の打つ手の早さ」だろう。さらに、もうひとつの理由として、台湾製造業の最終的な客先は中国ではなく欧米だったという点が挙げられる。
台湾経済部の発表によると、海外に進出した台湾企業の販売割合は、「第三国向け販売」が74.6%で、「現地向け販売」は20.7%だ。たとえばホンハイは、中国全土に30を超える生産拠点を持っているが、主要顧客は米アップルであり、その生産活動は主に米国向けだった。
■日系企業で起きた「中国離れ」と構図は同じ
台湾企業が「中国内販モデル」だったのであれば、「客に近いところ」での生産が最適となるため、回帰の必要性は低い。しかし、台湾企業の販売先は中国ではないことのほうが多いのだ。
ここ数年、大陸に進出済みの台湾企業では、人件費、物流費、用地代などのコストが上昇し、生産拠点としての中国の魅力は薄れていた。そこに米中貿易戦争が起きたことで、生産地移転の引き金を引いたとみることもできる。
これはかつて日系企業で起きたことに似ている。2012年の反日デモは、中国に進出していた日系工場の中国離れのきっかけになった。日中関係の悪化を契機に、工場の赤字に悩んでいた日系企業が「チャイナプラスワン」という活路を開き、東南アジアに出て行ったのだ。
ちなみに台湾経済部の調査では、有効回答2734社のうち15.8%に当たる432社が大陸(もしくは香港)から生産ラインの移転を検討しているという。移転先で最も多いのは東南アジアの49.2%、次いで台湾の41.8%だ。
■中国の製造業による“紅いサプライチェーン”の驚異
これまで台湾企業は委託生産加工などを中心に大陸の製造業を大きく下支えをしてきた。その関係は「兄」と「弟」の関係にも近い。しかし、2015年頃から大陸の製造業が力をつけはじめ、台湾の工場への発注が減り、大陸にある台湾系工場も熾烈な価格競争に巻き込まれるようになった。中国の製造業による“紅いサプライチェーン”の台頭が、台湾の製造業にとっての脅威になったのだ。
一方で、世界の製造強国を目指す中国は、台湾を“紅いサプライチェーン”に誘い込む。台湾企業は半導体や工作機械、ロボットに強く、また台湾人は言葉も生活習慣も近い――台湾は中国がさらなる技術導入を図る上で欠かせない存在なのだ。
それが最も顕著に表れたのが、中国政府が2018年2月に発表した「31項目の措置」である。その第1条には、「『中国製造2025』行動計画に参加する台湾企業には大陸企業と同等の政策を適用する」という文言があり、中国政府はハイエンドの製造業に投資する台湾企業を全面的にサポートするという。
蔡英文政権が「台湾回帰政策」の立案の検討に入った2018年10月は、米中貿易戦争の“開戦”からわずか3カ月後だ。その底流には、台湾を苦しめるようになっていた“紅いサプライチェーン”からの脱出があったのではないだろうか。
■ホンハイはすでにインドでiPhoneXSとXRの生産を開始
それでは台湾は、“紅いサプライチェーン”から離れ、“世界のサプライチェーン”に移れるのだろうか。台湾政府の首脳部には、すでに独自のサプライチェーン構築に向けた青図があるようだ。
5月15日に開催された「アジア政治経済景気展望研究会」で行政院政務委員の龔明鑫氏は、将来、国際分業体制は実質的な変化を遂げるだろうとし、「政府は回帰した台湾企業をアップグレードさせ、“非・紅色サプライチェーン”を形成する」と述べた。そのために「台湾政府は東南アジア各国の政府と折衝している」(経済日報)という。
それはベトナムやタイなどに南下した産業立地を、ハイエンドの製造拠点である台湾とつないでネットワーク化させようという構想だ。すでに中国から撤退した台湾企業は、ベトナムやタイ、インドなどに生産拠点を形成しつつある。たとえばインド紙「インディア・トゥデイ」は、ホンハイはすでにインドでiPhoneXSとXRの生産を開始しているのではないかと報じている。
米中貿易戦争の結果、台湾企業は中国から離れつつある。それは中国から製造業を奪おうとする米国の思惑にも添う。ホンハイがiPhoneの新工場を稼働させるインドでは、「Made in India」を国策に製造業の集積を急ぐ。
モバイルに見るサプライチェーンの変化は、中国製造業の衰退を暗示するだけではなく、壮大なシャッフルが起きているとみたほうがいいだろう。そこで台湾は漁夫の利よりも大きい果実を狙っている。
台湾企業の「中国離れ」が進んでいるのは、米国が中国からの輸入品の関税を値上げしているのが契機ですが、元々世界の工場になった魅力の人件費や用地価格が安価であった魅力が薄れてきていた背景もある。
特に、近年台湾併合への圧力を強めている習近平の脅威に対抗する台湾では、米中貿易戦争をチャンスととらえ、蔡英文政権が2019年1月から、「歓迎台商回台投資行動方案(台湾企業の台湾回帰投資行動を歓迎する計画)」を実施して中国本土に進出していた台湾の製造業を呼び戻そうとしているのだそうです。
鴻海(ホンハイ)の他にも、電子機器のEMS大手の仁宝電脳工業(コンパル)、光宝科技(ライトン)。和碩聯合科技(ペガトロン)、広達電脳(クアンタ)、台達電子工業(デルタ電子)、台郡科技(フレキシウム)など、6月末時点で台湾企業81社が大陸からの投資シフトを表明しているのだと。
台湾企業の投資シフトがこれだけ早いのは、「政府の打つ手の早さ」と、台湾製造業の最終的な客先は中国ではなく欧米だと言うこと。海外に進出した台湾企業の販売割合は、「第三国向け販売」が74.6%で、「現地向け販売」は20.7%なのだそうです。
ホンハイは、中国全土に30を超える生産拠点を持っているが、主要顧客は米アップルであり、その生産活動は主に米国向けなのだそうです。
米中貿易戦争の結果、台湾企業は中国から離れつつある。それは中国から製造業を奪おうとする米国の思惑にも添う。一方、ホンハイがiPhoneの新工場を稼働させるインドでは、「Made in India」を国策に製造業の集積を目指している。
台湾、米国、インドの利害が一致したサプライチェーンの変革が進められているのですね。
世界の工場中国に投資していたのは、台湾企業だけではなく、日本を含めた世界の多くの国の製造業。それらの国々の企業の、中国国内向け以外の製品は、台湾企業同様に、脱中国やチャイナプラスワンに迫られているのですね。
その新たな製品化拠点の移行先は、ベトナムなどの東南アジア諸国が挙げられていますが、やがては中国を追い抜くと言われる人口増を続けているインドが、政府の呼び込み政策もあり、有力候補となっているのですね。
世界の工場が、中国からインドへ移行するとの同様の見方の解説は他でも聞かれるようになっていますね。
インドが世界経済を救う? 2019年07月04日 | 大和総研グループ | 児玉 卓
米中貿易戦争が引き起こしている、脱中国、チャイナプラスワンの動きは、台湾、インドの受け皿政策推進とあいまって鈍化している中国経済に拍車をかけることとなりますね。
中国からの輸入製品の関税値上げで、米国内の消費者が高いものを買わざるをえなくなるという米国内のデメリットは、中国製品より安価な他国製品が輸入出来れば、そのデメリットは軽減される。
国共内戦で、日本と闘って疲弊していた国民党軍からロシアの支援を得て政権を横取りした中国共産党の建国70周年を祝うと言う中国。
毛沢東時代の独裁政権へり回帰を目指す習近平ですが、課題山積となってきていますね。
# 冒頭の画像は、深圳にある鴻海(ホンハイ)精密工業の中国製造子会社フォックスコンの工場
この花の名前は、ヤマトリカブト
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まったく非常識な民族・韓国人ですよ。