台湾有事はどのように始まるのか。多くの専門家が可能性が高いと指摘するのが、中国による台湾の海上封鎖だ。これに対し、米国は、台湾に加えて日本などの同盟国とともに海軍艦艇を台湾東岸沖の海域に展開し、必要物資を輸送する海上ルートを確保して中国に対抗することが想定される。
海上封鎖を巡る米中の戦いはどちらに軍配が上がるのか。
米シンクタンク「ブルッキングス研究所」のマイケル・オハンロン上級研究員は、報告書「中国は台湾を獲(と)れるか?」で、中国が台湾に着上陸侵攻する事態は「可能性が低い」と分析したと、産経。
米国の介入を防ぐために西太平洋の米空母や米軍基地をたたかなければならないからだ。失敗すれば、中国国内でも批判を招きかねない。そもそも、中国軍は着上陸侵攻に必要な水陸両用艦に十分な投資を行っていないのだそうです。
報告書では「最もありそうなシナリオ」として、中国による海上封鎖に焦点を絞り、シミュレーションを行った。金門・馬祖など台湾の離島を占拠するよりも台湾住民の被害を最小限に抑えることができ、事実上の台湾統一を実現する上で最も効果的だからだと。
米国は台湾に出入りする貨物船などが安全に航行できる海上ルートの構築を目指す。対潜ソナーの能力を踏まえて10~20キロごとに海軍艦艇を配備すると仮定すれば、艦艇100隻が必要になる。このうち、日本、オーストラリア、英国、フランスのうちの 1、2カ国が10~50隻を派遣する前提でシミュレーションは進む。
米国主導の「海の回廊」を維持する上で、最大の難敵は中国の潜水艦だ。中国軍は60隻の潜水艦を投入し、米軍や自衛隊の艦艇を攻撃することが予想される。
ここでポイントになるのが、敵を発見し、その情報や命令を素早く伝えて指揮統制するC41SR能力。
中国の人工衛星やレーダーが船団を発見し、さらに民間商船と海軍艦艇を区別して標的を即時に指示できれば、中国の潜水艦は米側の艦艇を効果的に攻撃できると、産経。
だが、そうした能力がそもそもなかったり、中国のC4ISR能力が麻痺(まひ)したりすれば、中国の潜水艦は自力で敵を探し回らなければならず、米軍などによるサイバー攻撃や衛星攻撃で中国の潜水艦は沈められることになると。
シミュレーションでは、中国のC4ISRが機能していれば、中国軍は潜水艦29隻の損失で米軍や自衛隊の艦艇100隻を沈めることができ、「海の回廊」は崩壊する。そうでなければ、中国の潜水艦60隻は全て撃沈され、米軍などの艦艇の損害は12隻で済むという結果が出たのだそうです。
では、米軍は中国軍のC4ISRを無力化できるのか。それは「分からない」というのが報告書の見解だと、産経。
報告書では、どちらが勝利しても、双方合わせて数千人の犠牲者が出ると予測。
そして、劣勢になった側が負けを認め、撤退する可能性も低いとした。双方にとり重要な国益が懸かった戦いだからだと。
このため、事態はエスカレートし、より危険なフェーズになるという前提でもシミュレーションを行った。そのシナリオとは、劣勢に陥った中国軍が沖縄、米領グアム、台湾を地上配備型ミサイルで攻撃し、「海の回廊」を構築する米軍や自衛隊の艦艇を空襲する事態だと産経。
国内経済の行き詰まりで、習近平が人民の眼を外に向ける為台湾侵攻に踏み切る可能性が語られています。
その事態の具体的シミュレーション情報は興味深い。(上)ということで、続きが待たれます。
# 冒頭の図表は、海上封鎖をめぐる攻防のシミュレーションの結果
この花の名前は、カミツレ
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA
海上封鎖を巡る米中の戦いはどちらに軍配が上がるのか。
自衛艦も派遣? 海上封鎖を破るには中国軍の「目」を潰せるかどうかがカギ 「中国は台湾を獲れるか」(上) 有事を読み解く⑥ - 産経ニュース 2024/4/2
台湾有事はどのように始まるのか。多くの専門家が可能性が高いと指摘するのが、中国による台湾の海上封鎖だ。これに対し、米国は、台湾に加えて日本などの同盟国とともに海軍艦艇を台湾東岸沖の海域に展開し、必要物資を輸送する海上ルートを確保して中国に対抗することが想定される。中国は潜水艦や機雷を使い海上ルートを潰そうとするだろう。海上封鎖を巡る米中の戦いはどちらに軍配が上がるか。
「実力伯仲のチームが戦うスーパーボウルの勝者がどちらか、事前に確信をもって予測するようなものだ」
米シンクタンク「ブルッキングス研究所」のマイケル・オハンロン上級研究員は、2022年 8月に発表した報告書「中国は台湾を獲(と)れるか?」で、こう指摘した。米アメリカンフットボールの一大イベント並みに予測が難しいとされたのは、海上封鎖を巡る米中の戦いだ。
オハンロン氏は、中国が台湾に着上陸侵攻する事態は「可能性が低い」と分析する。米国の介入を防ぐために西太平洋の米空母や米軍基地をたたかなければならないからだ。失敗すれば、中国国内でも批判を招きかねない。そもそも、中国軍は着上陸侵攻に必要な水陸両用艦に十分な投資を行っていない。
報告書では「最もありそうなシナリオ」として、中国による海上封鎖に焦点を絞り、シミュレーションを行った。金門・馬祖など台湾の離島を占拠するよりも台湾住民の被害を最小限に抑えることができ、事実上の台湾統一を実現する上で最も効果的だからだ。医薬品や生活必需品を運ぶ船に中国本土への立ち寄りを義務付け、リスクを回避したい船会社が台湾への輸送に二の足を踏む事態が考えられる。
これに対し、米国は台湾に出入りする貨物船などが安全に航行できる海上ルートの構築を目指す。対潜ソナーの能力を踏まえて10~20キロごとに海軍艦艇を配備すると仮定すれば、艦艇100隻が必要になる。このうち、日本、オーストラリア、英国、フランスのうちの 1、2カ国が10~50隻を派遣する前提でシミュレーションは進む。
■魚雷とミサイル
米国主導の「海の回廊」を維持する上で、最大の難敵は中国の潜水艦だ。中国軍は60隻の潜水艦を投入し、米軍や自衛隊の艦艇を攻撃することが予想される。シミュレーションでは60隻のうち20隻は魚雷で、残る40隻は射程50~200キロの対艦ミサイルで攻撃すると考えた。
ここでポイントになるのが、敵を発見し、その情報や命令を素早く伝えて指揮統制するC41SR能力だ。中国の人工衛星やレーダーが船団を発見し、さらに民間商船と海軍艦艇を区別して標的を即時に指示できれば、中国の潜水艦は米側の艦艇を効果的に攻撃できる。
中国海南省の発射場から打ち上げられた大型ロケット「長征 5号B」(新華社=共同)
だが、そうした能力がそもそもなかったり、米軍などによるサイバー攻撃や衛星攻撃で中国のC4ISR能力が麻痺(まひ)したりすれば、中国の潜水艦は自力で敵を探し回らなければならず、魚雷やミサイルを商船に向けて〝無駄撃ち〟することになる。その間に米軍や自衛隊の哨戒機によって発見・追尾され、中国潜水艦は沈められることになる。
シミュレーションでは、中国のC4ISRが機能していれば、中国軍は潜水艦29隻の損失で米軍や自衛隊の艦艇100隻を沈めることができ、「海の回廊」は崩壊する。そうでなければ、中国の潜水艦60隻は全て撃沈され、米軍などの艦艇の損害は12隻で済むという結果が出た。
■数千人の犠牲者
では、米軍は中国軍のC4ISRを無力化できるのか。それは「分からない」というのが報告書の見解だ。
実際、C4ISRを巡る戦いに関する予測は極めて難しい。例えば、C4ISRを無力化するための主要な手段となるサイバー攻撃について、防衛省幹部は「自衛隊の情報通信基盤がハッキングされた場合の影響のシナリオは無限にある。すぐに修復できる可能性もあるし、ずっとシステムが使えない事態もあり得る」と語る。
このため、防衛省はシミュレーションで、サイバー攻撃で被る損害に関しては「警戒監視システムが 3時間使えなくなった」などといった条件を仮定するしかないという。オハンロン氏が海上封鎖を巡る戦いの結果を予測するのは難しいとしたのはこのためだ。
ただし、報告書では、どちらが勝利しても、双方合わせて数千人の犠牲者が出ると予測した。そして、劣勢になった側が負けを認め、撤退する可能性も低いとした。双方にとり重要な国益が懸かった戦いだからだ。
このため、事態はエスカレートし、より危険なフェーズになるという前提でもシミュレーションを行った。そのシナリオとは、劣勢に陥った中国軍が沖縄、米領グアム、台湾を地上配備型ミサイルで攻撃し、「海の回廊」を構築する米軍や自衛隊の艦艇を空襲する事態だ。
(杉本康士、田中靖人)
台湾有事はどのように始まるのか。多くの専門家が可能性が高いと指摘するのが、中国による台湾の海上封鎖だ。これに対し、米国は、台湾に加えて日本などの同盟国とともに海軍艦艇を台湾東岸沖の海域に展開し、必要物資を輸送する海上ルートを確保して中国に対抗することが想定される。中国は潜水艦や機雷を使い海上ルートを潰そうとするだろう。海上封鎖を巡る米中の戦いはどちらに軍配が上がるか。
「実力伯仲のチームが戦うスーパーボウルの勝者がどちらか、事前に確信をもって予測するようなものだ」
米シンクタンク「ブルッキングス研究所」のマイケル・オハンロン上級研究員は、2022年 8月に発表した報告書「中国は台湾を獲(と)れるか?」で、こう指摘した。米アメリカンフットボールの一大イベント並みに予測が難しいとされたのは、海上封鎖を巡る米中の戦いだ。
オハンロン氏は、中国が台湾に着上陸侵攻する事態は「可能性が低い」と分析する。米国の介入を防ぐために西太平洋の米空母や米軍基地をたたかなければならないからだ。失敗すれば、中国国内でも批判を招きかねない。そもそも、中国軍は着上陸侵攻に必要な水陸両用艦に十分な投資を行っていない。
報告書では「最もありそうなシナリオ」として、中国による海上封鎖に焦点を絞り、シミュレーションを行った。金門・馬祖など台湾の離島を占拠するよりも台湾住民の被害を最小限に抑えることができ、事実上の台湾統一を実現する上で最も効果的だからだ。医薬品や生活必需品を運ぶ船に中国本土への立ち寄りを義務付け、リスクを回避したい船会社が台湾への輸送に二の足を踏む事態が考えられる。
これに対し、米国は台湾に出入りする貨物船などが安全に航行できる海上ルートの構築を目指す。対潜ソナーの能力を踏まえて10~20キロごとに海軍艦艇を配備すると仮定すれば、艦艇100隻が必要になる。このうち、日本、オーストラリア、英国、フランスのうちの 1、2カ国が10~50隻を派遣する前提でシミュレーションは進む。
■魚雷とミサイル
米国主導の「海の回廊」を維持する上で、最大の難敵は中国の潜水艦だ。中国軍は60隻の潜水艦を投入し、米軍や自衛隊の艦艇を攻撃することが予想される。シミュレーションでは60隻のうち20隻は魚雷で、残る40隻は射程50~200キロの対艦ミサイルで攻撃すると考えた。
ここでポイントになるのが、敵を発見し、その情報や命令を素早く伝えて指揮統制するC41SR能力だ。中国の人工衛星やレーダーが船団を発見し、さらに民間商船と海軍艦艇を区別して標的を即時に指示できれば、中国の潜水艦は米側の艦艇を効果的に攻撃できる。
中国海南省の発射場から打ち上げられた大型ロケット「長征 5号B」(新華社=共同)
だが、そうした能力がそもそもなかったり、米軍などによるサイバー攻撃や衛星攻撃で中国のC4ISR能力が麻痺(まひ)したりすれば、中国の潜水艦は自力で敵を探し回らなければならず、魚雷やミサイルを商船に向けて〝無駄撃ち〟することになる。その間に米軍や自衛隊の哨戒機によって発見・追尾され、中国潜水艦は沈められることになる。
シミュレーションでは、中国のC4ISRが機能していれば、中国軍は潜水艦29隻の損失で米軍や自衛隊の艦艇100隻を沈めることができ、「海の回廊」は崩壊する。そうでなければ、中国の潜水艦60隻は全て撃沈され、米軍などの艦艇の損害は12隻で済むという結果が出た。
■数千人の犠牲者
では、米軍は中国軍のC4ISRを無力化できるのか。それは「分からない」というのが報告書の見解だ。
実際、C4ISRを巡る戦いに関する予測は極めて難しい。例えば、C4ISRを無力化するための主要な手段となるサイバー攻撃について、防衛省幹部は「自衛隊の情報通信基盤がハッキングされた場合の影響のシナリオは無限にある。すぐに修復できる可能性もあるし、ずっとシステムが使えない事態もあり得る」と語る。
このため、防衛省はシミュレーションで、サイバー攻撃で被る損害に関しては「警戒監視システムが 3時間使えなくなった」などといった条件を仮定するしかないという。オハンロン氏が海上封鎖を巡る戦いの結果を予測するのは難しいとしたのはこのためだ。
ただし、報告書では、どちらが勝利しても、双方合わせて数千人の犠牲者が出ると予測した。そして、劣勢になった側が負けを認め、撤退する可能性も低いとした。双方にとり重要な国益が懸かった戦いだからだ。
このため、事態はエスカレートし、より危険なフェーズになるという前提でもシミュレーションを行った。そのシナリオとは、劣勢に陥った中国軍が沖縄、米領グアム、台湾を地上配備型ミサイルで攻撃し、「海の回廊」を構築する米軍や自衛隊の艦艇を空襲する事態だ。
(杉本康士、田中靖人)
米シンクタンク「ブルッキングス研究所」のマイケル・オハンロン上級研究員は、報告書「中国は台湾を獲(と)れるか?」で、中国が台湾に着上陸侵攻する事態は「可能性が低い」と分析したと、産経。
米国の介入を防ぐために西太平洋の米空母や米軍基地をたたかなければならないからだ。失敗すれば、中国国内でも批判を招きかねない。そもそも、中国軍は着上陸侵攻に必要な水陸両用艦に十分な投資を行っていないのだそうです。
報告書では「最もありそうなシナリオ」として、中国による海上封鎖に焦点を絞り、シミュレーションを行った。金門・馬祖など台湾の離島を占拠するよりも台湾住民の被害を最小限に抑えることができ、事実上の台湾統一を実現する上で最も効果的だからだと。
米国は台湾に出入りする貨物船などが安全に航行できる海上ルートの構築を目指す。対潜ソナーの能力を踏まえて10~20キロごとに海軍艦艇を配備すると仮定すれば、艦艇100隻が必要になる。このうち、日本、オーストラリア、英国、フランスのうちの 1、2カ国が10~50隻を派遣する前提でシミュレーションは進む。
米国主導の「海の回廊」を維持する上で、最大の難敵は中国の潜水艦だ。中国軍は60隻の潜水艦を投入し、米軍や自衛隊の艦艇を攻撃することが予想される。
ここでポイントになるのが、敵を発見し、その情報や命令を素早く伝えて指揮統制するC41SR能力。
中国の人工衛星やレーダーが船団を発見し、さらに民間商船と海軍艦艇を区別して標的を即時に指示できれば、中国の潜水艦は米側の艦艇を効果的に攻撃できると、産経。
だが、そうした能力がそもそもなかったり、中国のC4ISR能力が麻痺(まひ)したりすれば、中国の潜水艦は自力で敵を探し回らなければならず、米軍などによるサイバー攻撃や衛星攻撃で中国の潜水艦は沈められることになると。
シミュレーションでは、中国のC4ISRが機能していれば、中国軍は潜水艦29隻の損失で米軍や自衛隊の艦艇100隻を沈めることができ、「海の回廊」は崩壊する。そうでなければ、中国の潜水艦60隻は全て撃沈され、米軍などの艦艇の損害は12隻で済むという結果が出たのだそうです。
では、米軍は中国軍のC4ISRを無力化できるのか。それは「分からない」というのが報告書の見解だと、産経。
報告書では、どちらが勝利しても、双方合わせて数千人の犠牲者が出ると予測。
そして、劣勢になった側が負けを認め、撤退する可能性も低いとした。双方にとり重要な国益が懸かった戦いだからだと。
このため、事態はエスカレートし、より危険なフェーズになるという前提でもシミュレーションを行った。そのシナリオとは、劣勢に陥った中国軍が沖縄、米領グアム、台湾を地上配備型ミサイルで攻撃し、「海の回廊」を構築する米軍や自衛隊の艦艇を空襲する事態だと産経。
国内経済の行き詰まりで、習近平が人民の眼を外に向ける為台湾侵攻に踏み切る可能性が語られています。
その事態の具体的シミュレーション情報は興味深い。(上)ということで、続きが待たれます。
# 冒頭の図表は、海上封鎖をめぐる攻防のシミュレーションの結果
この花の名前は、カミツレ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA