中国のスパイと茶化される近藤氏の知人の、中国の日中近現代史を専攻する学者さんが、9月上旬
「これからわが国が行うことは、日本が20世紀前半に行った満蒙開拓団のようなものだ。すなわち、中国経済が立ち行かない中、今後多くの中国人が、ロシア極東地域を開発しに行くだろう」
と、述べたのだそうです。
満蒙開拓団とは、日本が満州事変を起こした後、1932年に建国した満州国に移民した約27万人の日本人のこと。
中国も、中ロ国境4249kmの近くの省や自治区に、約1億1000万人が居住している。彼らを、約630万人しか居住者がおらず立ち遅れたロシア極東地域に送り込み、開発しようということ。
9月7日、ロシア極東のウラジオストクで開かれている「第7回東方経済フォーラム」に参加したウラジーミル・プーチン大統領は、36分に及ぶ長広舌をぶち、次のように述べたのだそうです。
「私が指摘したいのは、昨日、ガスプロム(国営天然ガス会社)と中国側とで、天然ガスの支払いに関して、合意に達した。それは今後、ルーブルと人民元を使用するということだ。比率は50対50だ」
中国とロシアが、天然ガスの長期契約を結んだのは、2014年5月20日と21日、習近平主席が主催して上海で開かれたアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)に、プーチン大統領が参加。この時、2018年から30年間、最終供給量を年間380億m3とする天然ガスをロシアから中国にパイプラインで運ぶ契約を結んだのでした。
このパイプラインは「シベリアの力」と名づけられ、2019年12月2日に開通。
ロシアからすれば、これによって米欧などからの制裁による自国の経済危機を逃れる道を作った。一方の中国からすれば、自国のエネルギー危機を回避する道を作った。
この時から、ロシア経済を中国が握る傾向が強まっていったのだったと近藤氏。
中ロは15項目の協定を新たに結んだ。その中で、12、13、14番目に当たるのが、エネルギー関連。
12.中国石油天然気集団とロシアガスプロムの極東天然ガス購買協定
13.中国西部の精錬工場に供給する原油購買契約
14.中国石油天然気集団とロスネフチ(ロシア国有石油会社)の低炭素分野での契約覚書
プーチン大統領は両国の通貨を半々にすると言うが、中国はロシアという世界最大の国土を持つ国を、「人民元経済圏」に取り込みたいと考えていると、近藤氏。
今月15日、16日にウズベキスタンのサマルカンドで開かれる上海協力機構(SCO)で、習近平主席とプーチン大統領の41回目の会談が開催予定。
ウクライナ侵攻という負荷を抱えるプーチンと、共産党大会を控え、経済不振とゼロコロナウイルス対策で国内不安を抱える習近平の綱引きが注目されます。
# 冒頭の画像は、習近平国家主席の誕生日を祝うプーチン大統領 (2019年6月15日)
女郎雲
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「これからわが国が行うことは、日本が20世紀前半に行った満蒙開拓団のようなものだ。すなわち、中国経済が立ち行かない中、今後多くの中国人が、ロシア極東地域を開発しに行くだろう」
と、述べたのだそうです。
満蒙開拓団とは、日本が満州事変を起こした後、1932年に建国した満州国に移民した約27万人の日本人のこと。
中国も、中ロ国境4249kmの近くの省や自治区に、約1億1000万人が居住している。彼らを、約630万人しか居住者がおらず立ち遅れたロシア極東地域に送り込み、開発しようということ。
ますます中国依存を深めるロシア、極東に「中国人開拓団」受け入れの現実味 東アジア「深層取材ノート」(第153回) | JBpress (ジェイビープレス) 2022.9.9(金) 近藤 大介
2月にロシアがウクライナ侵攻を始めた時、知人の中国の日中近現代史を専攻する学者は、こう喝破した。
「ロシアのウクライナ侵攻は、1931年に日本が起こした『九一八事変』(満州事変)の21世紀版だ。かつて日本は、中国東北地方に不意打ちをかけて、一気呵成に占領。偽満州国を建国した。いまのロシアも、ウクライナ東部に不意打ちをかけて、親ロシアの傀儡国家を作ろうとしている。1931年の日本と2022年のロシアは瓜二つだ」
それから半年余りを経た9月上旬、改めてこう述べた。
「これからわが国が行うことは、日本が20世紀前半に行った満蒙開拓団のようなものだ。すなわち、中国経済が立ち行かない中、今後多くの中国人が、ロシア極東地域を開発しに行くだろう」
中国による「ロシア浸食」
満蒙開拓団とは、日本が満州事変を起こした後、1932年に建国した満州国に移民した約27万人の日本人のことである。世界恐慌で経済不況に陥った日本は、1936年から「満州農業移民100万戸移住計画」を国策に定め、疲弊した農村の人々を積極的に満州へ送った。
同様に中国も、中ロ国境4249kmの近くの省や自治区に、約1億1000万人が居住している。彼らを、約630万人しか居住者がおらず立ち遅れたロシア極東地域に送り込み、開発しようということのようだ。
これまでは、「中国による浸食」を恐れたロシア側が、中国移民に否定的だった。だが、ウクライナ侵攻後に米欧などの強烈な制裁を喰らい、背に腹は代えられなくなったということだろう。
エネルギー供給で固く結びつく中国とロシア
中ロ接近は「ヒト」ばかりではない。「カネ」と「エネルギー」の動きも、風雲急を告げている。9月7日、ロシア極東のウラジオストクで開かれている「第7回東方経済フォーラム」に参加したウラジーミル・プーチン大統領は、36分に及ぶ長広舌をぶち、次のように述べた。
「私が指摘したいのは、昨日、ガスプロム(国営天然ガス会社)と中国側とで、天然ガスの支払いに関して、合意に達した。それは今後、ルーブルと人民元を使用するということだ。比率は50対50だ」
プーチン大統領が指摘した「中国側」というのは、中国石油天然気集団(CNPC)である。昨年の売上高2兆8073億元(約57兆9100億円)、先月3日に発表された「2022年フォーチュン・グローバル500」(世界500強企業)で4位につけている世界最大の石油関連企業だ。
同社のホームページで確認すると、たしかに9月7日、プーチン大統領が言及したニュースを載せている。
<9月6日、第7回東方経済フォーラムの期間中、中国石油集団の戴厚良董事長(会長)は、ロシアガスプロムのミレイ総裁とオンライン会議を開催。双方は天然ガスの分野で、広範な提携の交流を行った。フォーラムの期間中、双方は「中ロイーストライン天然ガス購買協定」の関係補充協定に署名した>
中国とロシアが、天然ガスの長期契約を結んだのは、ロシアがクリミア半島を占拠した直後の2014年5月のことだった。同年5月20日と21日、習近平主席が主催して上海で開かれたアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)に、プーチン大統領が参加。この時、2018年から30年間、最終供給量を年間380億m3とする天然ガスをロシアから中国にパイプラインで運ぶ契約を結んだ。30年で計4000億ドルに上る両国史上最大の契約だった。
ロシアからすれば、これによって米欧などからの制裁による自国の経済危機を逃れる道を作った。一方の中国からすれば、自国のエネルギー危機を回避する道を作った。そしてこの時から、ロシア経済を中国が握る傾向が強まっていったのだった。このパイプラインは「シベリアの力」と名づけられ、結局、予定より一年遅れて2019年12月2日に開通した。
新たな天然ガスパイプラインも
プーチン大統領は、ウクライナ侵攻を始める直前にも、再び中国に救いの手を求めた。北京冬季オリンピックの開会式出席を理由に、2月4日に北京を訪問。習近平主席との38回目の首脳会談を行った。
この会談に合わせて、中ロは15項目の協定を新たに結んだ。その中で、12、13、14番目に当たるのが、エネルギー関連だった。
12.中国石油天然気集団とロシアガスプロムの極東天然ガス購買協定
13.中国西部の精錬工場に供給する原油購買契約
14.中国石油天然気集団とロスネフチ(ロシア国有石油会社)の低炭素分野での契約覚書
中国側の報道によれば、石油に関しては、今後10年間で1億トンの原油を中国がロシアから輸入すること、また天然ガスに関しては、2014年の契約の「上限380億m3」を、「上限480億m3」に引き上げる、すなわち100億m3上乗せすることが、主な合意内容だった。
また、ロシア側の報道では、新たにロシアからモンゴルを経由して中国に向かう天然ガスのパイプライン「シベリアの力2」を建設するとのことである。
この時、私が聞いた話では、これらの支払いは、従来のドル建てを止めて、ユーロ建てにしたという。だが今回のプーチン大統領の話によれば、ルーブルと人民元建てに変更したということのようだ。
ロシアが徐々に「人民元経済圏」に
プーチン大統領は両国の通貨を半々にすると言うが、中国はロシアという世界最大の国土を持つ国を、「人民元経済圏」に取り込みたいと考えている。今年5月5日にも、張漢暉駐ロ中国大使が、タス通信のインタビューに答えて、こう語っている。
「中ロの自国通貨決済は長年進めてきており、人民元による中ロ貿易決済は2014年の3.1%から2020年の17.5%までアップした。自国通貨で支払う役割は次第にアップしており、同時に交換レートのリスクを軽減し、手数料の節約にもなっている。中国は引き続き、中ロ貿易において投資と貸付でさらなる自国通貨決済を進めていく。(中略)
中国はロシア国民が、実際の需要に基づき人民元を使用、もしくは貯金することを歓迎する」
中ロ貿易は昨年、1468億ドルに上り、今年は1700億ドル突破が見込まれている。
今月15日、16日にウズベキスタンのサマルカンドで開かれる上海協力機構(SCO)で、習近平主席とプーチン大統領の41回目の会談が開かれる予定だ。ウクライナ戦争を経て、中ロ関係がどう「進化」していくのか、日本としても無関心ではいられない。
2月にロシアがウクライナ侵攻を始めた時、知人の中国の日中近現代史を専攻する学者は、こう喝破した。
「ロシアのウクライナ侵攻は、1931年に日本が起こした『九一八事変』(満州事変)の21世紀版だ。かつて日本は、中国東北地方に不意打ちをかけて、一気呵成に占領。偽満州国を建国した。いまのロシアも、ウクライナ東部に不意打ちをかけて、親ロシアの傀儡国家を作ろうとしている。1931年の日本と2022年のロシアは瓜二つだ」
それから半年余りを経た9月上旬、改めてこう述べた。
「これからわが国が行うことは、日本が20世紀前半に行った満蒙開拓団のようなものだ。すなわち、中国経済が立ち行かない中、今後多くの中国人が、ロシア極東地域を開発しに行くだろう」
中国による「ロシア浸食」
満蒙開拓団とは、日本が満州事変を起こした後、1932年に建国した満州国に移民した約27万人の日本人のことである。世界恐慌で経済不況に陥った日本は、1936年から「満州農業移民100万戸移住計画」を国策に定め、疲弊した農村の人々を積極的に満州へ送った。
同様に中国も、中ロ国境4249kmの近くの省や自治区に、約1億1000万人が居住している。彼らを、約630万人しか居住者がおらず立ち遅れたロシア極東地域に送り込み、開発しようということのようだ。
これまでは、「中国による浸食」を恐れたロシア側が、中国移民に否定的だった。だが、ウクライナ侵攻後に米欧などの強烈な制裁を喰らい、背に腹は代えられなくなったということだろう。
エネルギー供給で固く結びつく中国とロシア
中ロ接近は「ヒト」ばかりではない。「カネ」と「エネルギー」の動きも、風雲急を告げている。9月7日、ロシア極東のウラジオストクで開かれている「第7回東方経済フォーラム」に参加したウラジーミル・プーチン大統領は、36分に及ぶ長広舌をぶち、次のように述べた。
「私が指摘したいのは、昨日、ガスプロム(国営天然ガス会社)と中国側とで、天然ガスの支払いに関して、合意に達した。それは今後、ルーブルと人民元を使用するということだ。比率は50対50だ」
プーチン大統領が指摘した「中国側」というのは、中国石油天然気集団(CNPC)である。昨年の売上高2兆8073億元(約57兆9100億円)、先月3日に発表された「2022年フォーチュン・グローバル500」(世界500強企業)で4位につけている世界最大の石油関連企業だ。
同社のホームページで確認すると、たしかに9月7日、プーチン大統領が言及したニュースを載せている。
<9月6日、第7回東方経済フォーラムの期間中、中国石油集団の戴厚良董事長(会長)は、ロシアガスプロムのミレイ総裁とオンライン会議を開催。双方は天然ガスの分野で、広範な提携の交流を行った。フォーラムの期間中、双方は「中ロイーストライン天然ガス購買協定」の関係補充協定に署名した>
中国とロシアが、天然ガスの長期契約を結んだのは、ロシアがクリミア半島を占拠した直後の2014年5月のことだった。同年5月20日と21日、習近平主席が主催して上海で開かれたアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)に、プーチン大統領が参加。この時、2018年から30年間、最終供給量を年間380億m3とする天然ガスをロシアから中国にパイプラインで運ぶ契約を結んだ。30年で計4000億ドルに上る両国史上最大の契約だった。
ロシアからすれば、これによって米欧などからの制裁による自国の経済危機を逃れる道を作った。一方の中国からすれば、自国のエネルギー危機を回避する道を作った。そしてこの時から、ロシア経済を中国が握る傾向が強まっていったのだった。このパイプラインは「シベリアの力」と名づけられ、結局、予定より一年遅れて2019年12月2日に開通した。
新たな天然ガスパイプラインも
プーチン大統領は、ウクライナ侵攻を始める直前にも、再び中国に救いの手を求めた。北京冬季オリンピックの開会式出席を理由に、2月4日に北京を訪問。習近平主席との38回目の首脳会談を行った。
この会談に合わせて、中ロは15項目の協定を新たに結んだ。その中で、12、13、14番目に当たるのが、エネルギー関連だった。
12.中国石油天然気集団とロシアガスプロムの極東天然ガス購買協定
13.中国西部の精錬工場に供給する原油購買契約
14.中国石油天然気集団とロスネフチ(ロシア国有石油会社)の低炭素分野での契約覚書
中国側の報道によれば、石油に関しては、今後10年間で1億トンの原油を中国がロシアから輸入すること、また天然ガスに関しては、2014年の契約の「上限380億m3」を、「上限480億m3」に引き上げる、すなわち100億m3上乗せすることが、主な合意内容だった。
また、ロシア側の報道では、新たにロシアからモンゴルを経由して中国に向かう天然ガスのパイプライン「シベリアの力2」を建設するとのことである。
この時、私が聞いた話では、これらの支払いは、従来のドル建てを止めて、ユーロ建てにしたという。だが今回のプーチン大統領の話によれば、ルーブルと人民元建てに変更したということのようだ。
ロシアが徐々に「人民元経済圏」に
プーチン大統領は両国の通貨を半々にすると言うが、中国はロシアという世界最大の国土を持つ国を、「人民元経済圏」に取り込みたいと考えている。今年5月5日にも、張漢暉駐ロ中国大使が、タス通信のインタビューに答えて、こう語っている。
「中ロの自国通貨決済は長年進めてきており、人民元による中ロ貿易決済は2014年の3.1%から2020年の17.5%までアップした。自国通貨で支払う役割は次第にアップしており、同時に交換レートのリスクを軽減し、手数料の節約にもなっている。中国は引き続き、中ロ貿易において投資と貸付でさらなる自国通貨決済を進めていく。(中略)
中国はロシア国民が、実際の需要に基づき人民元を使用、もしくは貯金することを歓迎する」
中ロ貿易は昨年、1468億ドルに上り、今年は1700億ドル突破が見込まれている。
今月15日、16日にウズベキスタンのサマルカンドで開かれる上海協力機構(SCO)で、習近平主席とプーチン大統領の41回目の会談が開かれる予定だ。ウクライナ戦争を経て、中ロ関係がどう「進化」していくのか、日本としても無関心ではいられない。
9月7日、ロシア極東のウラジオストクで開かれている「第7回東方経済フォーラム」に参加したウラジーミル・プーチン大統領は、36分に及ぶ長広舌をぶち、次のように述べたのだそうです。
「私が指摘したいのは、昨日、ガスプロム(国営天然ガス会社)と中国側とで、天然ガスの支払いに関して、合意に達した。それは今後、ルーブルと人民元を使用するということだ。比率は50対50だ」
中国とロシアが、天然ガスの長期契約を結んだのは、2014年5月20日と21日、習近平主席が主催して上海で開かれたアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)に、プーチン大統領が参加。この時、2018年から30年間、最終供給量を年間380億m3とする天然ガスをロシアから中国にパイプラインで運ぶ契約を結んだのでした。
このパイプラインは「シベリアの力」と名づけられ、2019年12月2日に開通。
ロシアからすれば、これによって米欧などからの制裁による自国の経済危機を逃れる道を作った。一方の中国からすれば、自国のエネルギー危機を回避する道を作った。
この時から、ロシア経済を中国が握る傾向が強まっていったのだったと近藤氏。
中ロは15項目の協定を新たに結んだ。その中で、12、13、14番目に当たるのが、エネルギー関連。
12.中国石油天然気集団とロシアガスプロムの極東天然ガス購買協定
13.中国西部の精錬工場に供給する原油購買契約
14.中国石油天然気集団とロスネフチ(ロシア国有石油会社)の低炭素分野での契約覚書
プーチン大統領は両国の通貨を半々にすると言うが、中国はロシアという世界最大の国土を持つ国を、「人民元経済圏」に取り込みたいと考えていると、近藤氏。
今月15日、16日にウズベキスタンのサマルカンドで開かれる上海協力機構(SCO)で、習近平主席とプーチン大統領の41回目の会談が開催予定。
ウクライナ侵攻という負荷を抱えるプーチンと、共産党大会を控え、経済不振とゼロコロナウイルス対策で国内不安を抱える習近平の綱引きが注目されます。
# 冒頭の画像は、習近平国家主席の誕生日を祝うプーチン大統領 (2019年6月15日)
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