Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ブロークン・フラワーズ

2007-11-20 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2005年/アメリカ 監督/ジム・ジャームッシュ

「誰も俺のことを忘れちゃいなかった」


ずーっとくすくす笑いが止まんなかった。ジム・ジャームッシュってこんなテイストだったっけ?すごい侘び寂び入ってるよねえ。この侘び寂び感、アメリカ人の観客も共有してるんだろうか?いやあ、楽しませてもらいました。

ビル・マーレイのダメ男っぷりは、世の男性諸氏も見習った方がいいかも知れません。このキャラクター、かなり母性本能をくすぐります。私がなんとかしてあげなきゃ、という気分になりますね。隣人の黒人がやたらとおせっかいなのも、それに近いものがありそうです。

「ピンク」という色を一つのキーにしていろんな場面で使っているあたりも非常にセンスを感じるし、BGMのCDのエチオピア音楽やら、ドン・ジョンストンという紛らわしい名前など、細かいネタも用意周到。

私がこの作品をいい!と思ったのは、ドンの昔の女たちが今なお彼に対して何らかの愛情を抱いている、ということ。女は昔の男をいつまでも愛している、その事実が何だかほろ苦い。久しぶりの再会でベッドインしちゃう女、彼に撮ってもらった写真を大切に飾っていた女、会ったとたんに激情して突き飛ばす女。誰ひとり、彼に対して「あなたの存在は私の人生から消えてしまった」という反応を示さない。ドンもがんばって会いにいった甲斐があったというものですよ。

きっと彼女たちの愛情を感じて、彼の孤独感はずいぶん癒されたでしょう。「あんた誰」なんて言われなくてホントに良かった。でも、こんなすっとぼけた作品が賞を獲るんだから、カンヌ映画祭は懐が深い。小難しいヨーロッパ作品ばっかりがグランプリじゃないんですもんね。