Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ロスト・イン・トランスレーション

2009-01-10 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 2003年/アメリカ 監督/ソフィア・コッポラ
「風をあつめて」で完全ノックアウト



カラオケボックスで歌い疲れたビル・マーレーとスカちゃん、ふたりの壁越しにかすかなBGMとして聞こえてくる、はっぴいえんどの「風をあつめて」。日本を舞台にした本作で、唯一日本語歌詞として選曲されたこの楽曲に、ソフィア・コッポラの類い希なるセンスを感じ、すばらしいラストの余韻に浸っていると、なんとなんと再びこの名曲がエンディングソングとして流れてきましたよ。もう、降参です。確信犯だったわけですね。監督2作目にして、こりゃあ侘び寂びの世界。賛否両論ですが、私は大好きです、この作品。

「パリ、ジュテーム」でも書きましたが、異国にぽつんとひとりでいるとどうしようもない孤独を覚えることがあります。しかし、その孤独感は生きている実感でもあるわけです。本作では、その舞台として「日本」が選ばれており、アメリカ人であるソフィアの目から見た異世界日本の姿がシンボリックに描かれています。でも、「旅人の孤独」というテーマなら、舞台はトルコだろうが、中国だろうが、本当はどこだって構わないのです。これまた、鑑賞者によって、大変意見の分かれている部分ですが、ここで描かれている日本は、まさに異世界としての舞台装置の役割が主で、その他の余計な役割はあまりないように感じました。

ふと胸によぎる孤独、恋とは呼べないが胸のすみっこにひっかかるあの人。主演のふたりの心情が実に繊細なタッチで描かれていて、私の胸を何度も切ない風がひゅうと吹き抜けました。大変抑制の効いた展開で、ほんとにこれが2作目なの?と思えるほど。一方、音楽は若い監督らしいこだわりを感じます。次作の「マリー・アントワネット」はニュー・ウェーブ系の音楽だったけど、本作ではビル・マーレーがロキシー・ミュージックの「More Than This」なんか歌っちゃってて、たまりません。(ヘタクソでしたけどね)あと、深く印象に残ったのは、スカーレットが履いているストレッチ素材のシンプルなピンクのパンティ。それが何か?と言われればそれまでなんですけどね。清楚でもなく、エロでもなく、あのぴたっとしたパンティのスカーレットが本当に素敵でした。

つかず離れずのふたりが果たしてどうなるのかと思いつつ、用意されていたエンディングがあまりに鮮やかで思わずスタンディングオベーション。何とも爽やかで粋な計らい。大好きな細野さんの癒しボイスに耳を傾けながら、ラストの囁きを想像していると、頬がゆるんで仕方がない。「アメリカで会おう」でしょうか。それとも、「ホントは君と寝たかったんだ」でしょうか。いやあ、もっと粋なセリフだよなあと。いつまでも妄想少女な私でした。