Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

スラムドッグ$ミリオネア

2009-05-05 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2008年/イギリス 監督/ダニー・ボイル
<梅田ガーデンシネマにて鑑賞>

「エンタメ&ラブストーリー」

アカデミー作品賞を取ったので、社会派作品なんだと思っていました。ところが蓋を開けてみると、かなりのエンタメ路線。そして見事なラブストーリーなのでした。結果的には予想を裏切られたことによって、却って楽しむことができたという感じ。

ミリオネアのクイズの出題とほぼ同順でジャマールの過去が明らかになっていく、という展開はかなりご都合主義なんですね。本来ならば、やや興醒めしてしまうところですが、本作はそこを見事にクリアしている。それは、兄弟が過ごすムンバイ時代の躍動感あふれる、エネルギッシュな映像がすばらしいからです。原作ではクイズ番組の出題とジャマールの過去はもっと交錯してくるようですが、本作を娯楽作だと割り切って考えた場合、わかりやすさを優先したと考えるとあまり気になりません。

肥だめに落ちたり、追っ手から逃げ回ったり、電車に飛び乗ったり。兄弟が遭遇する現実は悲惨なのですが、映像は常にスピーディで生命力にあふれ、観客をぐいぐいと引っ張ります。ハリウッドがどんなに予算を出そうとも、あのインドの猥雑な街並みと群衆は再現できますまい。ムンバイにそびえるゴミの塔が圧巻です。

ジャマールとラティカのラブストーリーへと帰結してしまうことで、インドが抱える貧困問題はかき消されてしまうでしょうか。そんなことはありません。物乞いのために我が子を傷つけたり、売り飛ばしてしまう親たちがいる。兄弟がもがき苦しむ前半部の描写は容赦がなく、実に強い印象を最後まで残してくれます。

インド映画ではお馴染みのラストダンスもご愛敬。貧しさも苦しさも吹き飛ばしてやろうと言うインド人のパワーを感じます。それにしても、これだけ元気な映画が作品賞を獲るのは久しぶりではないでしょうか。あまりにも暗くて重かった「ノーカントリー」の反動かも知れません。