Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

赤い文化住宅の初子

2009-05-15 | 日本映画(あ行)
★★★★☆ 2007年/日本 監督/タナダ・ユキ
「王子様は追いかけてくるさ、きっと」

「赤い文化住宅の初子」って、なんかホラー映画みたいなタイトルに感じるのは私だけ?んなこた、さておき。

原作漫画を知らないのだが、ガロっぽいっというか、まるでつげ義春ワールド。時代設定は昭和?と思わせるほど、ノスタルジックなムードがいっぱい。貧乏で生活切り詰めて、つつましく生きる初子がいじらしくて、かわいい。突然彼がやってきて、慌てて服を着替えるなんてところも微笑ましい。カメラは初子の明るい表情をとらえることはほとんどなく、いつも悲しげで悩ましげだが、作品全体を重苦しく感じることはない。そこがとてもいい。このさじ加減にタナダ・ユキ監督のセンスを感じる。

いいかげん教師・坂井真紀と親切オバサン・浅田美代子。ふたりの存在感にインパクトがあり、作品全体を眺めたらそこだけ突出しているようなアンバランス感を味わう人もいるかも知れないが、私はOKだ。スレまくった大人のオンナ共に囲まれる初子がますますピュアな存在に見え、「初子、ヘコむな!アンタには三島クンがいるじゃないか。」と。

つまり、「天然コケッコー」同様、すっかりわたしゃ中坊の恋愛模様に一喜一憂。兄にいじめられ、学校でも孤独な初子。貧乏ゆえに数々のすれ違いが生ずるも、なぜかそこに気づかない天然な三島クンはまるでシンデレラの王子様だ。いつかきっと一緒になれると誓いを立てる田舎の寂しげなプラットホームがなぜかお城の階段に見えるぞ。てなわけで、完全にラブストーリーとして堪能した私なのでした。