Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

キャッチボール屋

2010-09-22 | 日本映画(か行)
★★★★ 2005年/日本 監督/大崎章

「ショート・バケーション」


北川悦吏子最高作「ロング・バケーション」というドラマがありました。(あの頃のキムタクは好きだったなあ)長い人生、たまには休んでもいいじゃないか。ジャンプするためには、たっぷりエネルギーを蓄える時間が必要なんだってね。さしずめ、本作は「ショート・バケーション」と言ったところでしょうか。日常に潜む小さい出会いや思いやりで、人は充分大切なことに気づける。もっと周りを見渡してごらんよ。ステキな人を見過ごしてないかい?大事なものを見逃してないかい?そんなささやきが聞こえてきそうです。中でも山口百恵の「夢先案内人」にまつわるエピソードが印象的。コインランドリーに出かけると、なぜか聞こえてくる「夢先案内人」。誰が何のために流しているのか…。

リストラされて地元で飲んでたはずなのに、目覚めたらなぜか東京の見知らぬ公園。そんな主人公がつぶやく「オレ、なんで東京にいるんだろ。」素っ頓狂なセリフだけど、これも、意外と深い。人は何か目的を持って東京にやってくる。仕事なのか、夢なのか。いや、ここで言う「東京」とは、東京に住む人に限らず、全ての人の居場所のことだろう。なぜ今自分はここにいて、その仕事をして、そのような毎日を暮らしているのか、という問いかけ。何かやりたいことがあったはずだ。夢を持っていたはずだ。その気持ちは今、どこにあるのだ?ボールを投げ、ボールを受ける。見知らぬ人たちとの交流を通じて、自分の居場所に気づくようになる主人公。

袖振り合うも多生の縁。他人との小さな関わりが心にじんわり残る佳作。特に仕事にお疲れ気味の人にオススメです。

さて、主人公を演じる大森南朋について。本作は、スクリーンのあちこちでちょこっと現れては希有な存在感を見せてた彼の初めての主演映画。「春眠り世田谷」から続く、癒しバージョンの南朋くんです。ぽわーんとしてて、現実感がない、でも憎めないいいヤツ。プライベートでも草野球やってるらしいので、彼の日常生活を見ているようなドキドキ感があります。本作は2005年の製作。この頃までは、こうしたほんわかした役どころと、クセのある役、両方をこなす、その二面性が大きな魅力でした。しかし、逆に言えば癒しキャラか毒キャラか、という感じだったわけです。それが2007年放送の「ハゲタカ」で「ビジネスマン」という第三のキャラを手に入れる。これは、大きな突破口だった。ファンだった私も、突き抜けたと思った。以来、メジャー作品にひっぱりだこですけど、いつまでもこうした小さい邦画に出て続けて欲しいなと思っています。