Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

サタデー・ナイト・フィーバー

2010-09-29 | 外国映画(さ行)
★★★ 1977年/アメリカ 監督/ジョン・バダム

「ビー・ジーズは色褪せない」


最初に断っておきますが、「リアル世代」ではありません。私の7つ上の姉がもろピンポイント。ダンス・ミュージックが好きなのもその影響大です。私は大阪のミナミに住んでいたのですが、「マハラジャ」なんかには行かず、もっぱら階下の「ディナスティ」ってディスコに通ってました。「ディナスティ」は60~70年代のディスコ・クラシックばかり流していたから、すごくお気に入りだった。「ディナスティ」に落ち着くまでは「キング&クイーン(通称キンクイ)」とか「ジジック」とか。当時のダイヤモンドビルは、どんどん店が変わっていきましたからね。「ディナスティ」は4階で「マハラジャ」は6階。エレベーターホールで何階を押すかで、もう好みがわかっちゃう。

そんなダンスミュージック好きがこの映画を観たことないなんて、誰にも言えないぞ。いつかは絶対見なきゃいけないんだ、と己に言い聞かせることウン年。ようやく、観賞してみたわけですが、く、く、くだらねー!なんで、こんなにつまらん話でヒットしたんだ…。で、特典映像を見ると(本編よりむしろ面白いかもしれん)、すでにジョン・トラボルタはスターだったんだね。だからこれはアイドル映画なんだね。

舞台はブルックリン。ペンキ屋でバイトするトニーは職場でも、家庭でも冴えない男。しかし、夜になり白いスーツに身を固め、ディスコに足を踏み入れた途端、トニーはダンスで人々を魅了するヒーローに大変身~~。まあ、それはいいです。どうせ、そういう話だと思ってたから。ブルックリンという地域での若者の閉塞感をプエルトリカンたちとの諍い、彼女を妊娠させてしまった友人の苦悩などを通じて描いているわけですが、どれもこれも非常に陳腐で底が浅い。しかも、相手役の女優がお世辞にも美人とは言えない。まるで、オバハン。なんじゃ、あのレオタード姿のダサイことと言ったら!ラストのトラボルタのセリフもトホホという以外にない。

というわけで、お話は全く面白くないのですが、ダンス・ミュージックの歴史の一端をかいま見る、という点では見るべきものがあるように思います。うん、無理矢理そう思うようにする。

本作の公開年は1977年。例えば、ヴァン・マッコイの「ハッスル」がヒットしたのが1975年。EW&Fやクール&ザ・ギャングなども1970年代初頭から活躍していることを考えると、黒人によるブラック・ミュージックは既に全盛期を迎えている。ところが、本作を見て驚いたのは、ここで繰り広げられるダンスは社交ダンスに非常に近いということ。トニーが通うディスコにもプエルトリカンはいても、黒人の姿はあまり見受けられない。もしかして、ディスコって、ダンス・ホールの発展したものだったのかなあ、なんて思ったりするのです。

日本に入ってきたディスコ文化って、黒人たちが押し上げたソウル・ミュージックの一大ブームとその波を受けた白人たちが彼らのテリトリーの中で発展させてきたものがないまぜになったものだったんじゃないだろうか。“ナイト・フィーバー、ナイト・フィバー♪”の歌詞の部分でみんなで一斉に踊るのは、間違いなく今の「パラパラ」に繋がっていると思うんだけど、こうした形式に当てはめたダンスというのが白人も日本人も得意とするところなんだね。ところが、これまた面白いことによーく見ていると、リズムの取り方が「ウラ」なんだよ。それでいて、くるっと回って、手を叩くところは、8ビートの中の「5」に当たるところ。盆踊り文化の日本人にはきっとこのリズムの取り方は新鮮に映っただろうなあ。

とまあ、つまらん映画でえらい長いレビューを書いてしまった。そうそう、どうしても最後に言っておきたい。ビー・ジーズのサウンドは最高。このグルーブ感は全く色褪せない。冒頭、「ステイン・アライブ」にのってトラボルタが街を歩くシーンが、本作のベストシーンと言えるでしょう。