Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

トム・ヤム・クン!

2010-09-23 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2005年/タイ 監督/プラッチャヤー・ピンゲーオ

「怒りの鉄拳」

まるでウケ狙いのタイトルですが、お話は至って悲惨で暗いです。世界公開に向けてタイらしいタイトルを、というのでこれになったんでしょうが、この噛み合ってなさも味わいの一つです。

「トニー・ジャーの超絶アクションを見たい」という希望は見事に満たしてもらえました。単身マフィアの元に飛び込んでいくトニーのキレキレのアクションは、何度も巻き戻して見てしまうほど凄いです。格闘技にあまり詳しくない私は関節技で戦うことの本当の凄さを知らないのかもしれない。それでも、その痛みはガッツリスクリーンから伝わってきます。しかも「1VS49」って、マンガの世界ですやん。次は「1VS99」とかになるのか。カポエラなんて、この映画を観なかったら一生ちゃんと見ることがなかったかも知れないし、紛れもなくここにしかないアクションがあります。だから、悲惨でも救われなくても必見なんです。

「マッハ!」「七人のマッハ!」と続けて見てきていますけども、全てのアクションは、怒りの鉄槌なんですね。たたっきってしまうことに対して何のためらいもない。トニー・ジャーがうかべる憤怒の表情は鬼神のごとく。自分の欲望を満足させるために聖なるものを穢すことに何のためらいも持たない犬畜生どもをつかんでは投げ、つかんでは投げ、地獄の底へとたたき落とす。何だか四天王像や仁王像が怒りの表情を顕わにして餓鬼どもを踏みつける姿を連想します。そうした連想になるのも、ひたすらトニー・ジャーが繰り出す技が人間離れしているからこそ。そんじょそこらのアクションなら、ただのケンカです。

女たちを薬漬けにしたり、何の抵抗もしない村人達を殺戮したり、聖なる象を殺したりと、どの作品を見ても悪い奴は鬼畜野郎ばかりでいたたまれません。しかも、そんな奴らが最終的にみな殺しになったからと言って、後味がスッキリするかと言えば全くそんなことはないのです。それでも、見たくなるタイ・アクション。とんでもない魔力にかけられたような気がします。