Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

チェイサー

2010-09-27 | 外国映画(た行)
★★★★ 2008年/韓国 監督/ナ・ホンジン

「夜の前半部が秀逸」

デリヘルを経営している元刑事のジュンホは、店の女の子たちが相次いで失踪する事態に見舞われていた。やがて最後に会ったと思われる客の電話番号が同じ事に気づくジュンホ。そして、その番号は直前に送り出したデリヘル嬢ミジンの客とも一致していた。ほどなくミジンとの連絡が取れなくなり、心配したジュンホはミジンの行方を追う。そして、偶然にも街中で問題の客を捕まえることに成功したジュンホは、男をそのまま警察に突き出すのだったが…。


村上龍主催のネット上でビデオニュースを発信する「RVR」というサイトがあるのですけど、そこでクァク・キョンテク、チョン・ユンチョル、イム・チャンサンの3人の韓国人監督と対談しており、大変面白いです。興味のある方はぜひご覧になって欲しいのですが、韓国映画界では新人監督に比較的大きな作品をポンと任せる風土があるそうです。その代わり失敗するとなかなか映画界には復帰できない、なんて冗談混じりに話してます。任せる限りは全部任せる。その代わり失敗したら干される。だからこそ、初監督作品を最高傑作にするくらいの意気込みで取り組むんでしょう。シビアな世界ですけど、チャンスが多いというのはいいことです。

本作は韓国では知らない人はいない程の有名事件を扱った作品ですし、確実に興行成績をあげることが見込まれてもいたでしょうから、そのプレッシャーたるや、相当なものだったんではないでしょうか。しかし、新人監督ナ・ホンジンは新人とは思えない見事なクライム・サスペンスを作りだしました。ひと際すばらしいのは前半部の夜の追走劇です。漆黒の闇の中で犯人を追い詰めるジュンホ。毎度のことですが、韓国映画は雨や闇を使った映像作りがうまいですね。映画の中盤で犯人は捕まるのですが、その後のじれったいことと言ったら!ハラハラを通り越してイライラになってきます。

この焦燥感を楽しめるかどうかが、本作の分かれ目ではないでしょうか。これまた毎度の事ながら韓国警察のいい加減さが顕わになりますが、20人も人を殺したと自供する男を部屋の片隅で手錠ひとつでほったらかし。ほんまでっか?と誰でも突っ込みたくなります。ほぼクロ間違いなしという猟奇殺人犯を泳がせる時も刑事の尾行はたったひとり。しかも、女性刑事ってそりゃあ、危なすぎやしませんかい?というわけで、後半部は警察の無能ぶりに私のイライラも頂点に達してしまいました。それでも、これでもかと突き付ける迫力は満点。情け無用の展開がこれまた「ザ・韓国映画」でございます。