Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

八日目の蝉

2012-04-03 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2011年/日本 監督/成島出
(DVDにて鑑賞)(原作は既読)


「一日一日をこどもと生きる」


全くその権威など信用していない日本アカデミー賞でありますが、
昨年は「悪人」、今年はこの作品が受賞してましたね。
こういう社会派に賞をあげときゃいいやって、風潮なんでしょうか。
ベストセラー小説が元ネタってことで、いろんなところを巻き込んで二次利益が出るんでしょう。
そして、井上真央は熱演ですけど、最優秀主演女優かと言われると、
主演はむしろ永作博美では?と思ってしまいました。
しかし「悪人」よりは、良かったです。

この映画で示されるのは、手垢のついたテーマの「母性」。
子供を産めない女性が、ひとたびその手に赤ん坊を抱いた瞬間に母になってしまった、
というもので、永作博美演じる希和子が「毎日、毎日この子と生きられますように」と願うその様には
全ての女性が胸を締め付けられるのではないでしょうか。
そこに、子供を産んだ経験があるかないかは関係ない。

もちろん私は全ての女性は母性を持っている、などと言う
男社会の押しつけ幻想などこれっぽっちも持っていません。

母性とは、子どもを産もうと産もうまいと全ての女性が持っているということでは決してなく、
目の前にある小さな命の一日一日の輝きに目をこらし、一瞬一瞬の営みに寄り添うことで生まれるものだ、と。
誘拐犯の永作博美の演技を見ていて、そう思わされました。

いつ逮捕されるかも知れない日々の中で刹那的に生きる女ですが、
だからこそ、ささやかな幸せの価値を誰よりも知っている。
そんな希和子を演じる永作博美がとても良かった。

エンジェルホームや写真館の描写は、気に入りませんでした。
敢えて、異空間のように見せることで、希和子と薫の世界を際立たせたかったのかも知れませんが、
私はエンジェルホームも写真館も特別な場所ではなく、
ふたりが通過した場所として配置してくれた方がすんなり溶け込めました。

あとは、やっぱり小池栄子。内股の小刻みな歩き方まで役作りしてて、この人はいい。
そして、劇団ひとり。この人、いつもおいしい役過ぎませんか。なんだかなあ。