Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

恋愛小説家

2012-04-20 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 1997年/アメリカ 監督/ジェームズ・L.ブルックス
(DVDにて観賞)

「日常の細やかな描写」


書いた本はすべてベストセラーという恋愛小説家メルビン。しかし実際の本人は、異常なまでに潔癖性で神経質の嫌われ者。周囲に毒舌をまき散らし、友人は誰もいない。。そんな彼がある日、ウェイトレスのキャロルに淡い恋心を抱くが・・・。

まあ、王道と言っちゃあ王道の展開なんですけど、ものすごく安心して見られるよね。
そういう気分の時に応えてくれる映画ってのは、それはそれでいい映画なんだと思う。
偏屈の作家が恋心を抱くウェイトレスのキャロル。
このキャロルが適度な具合に枯れているっていうのが、いいよね。
病気の息子がいて、毎日の生活にいっぱいいっぱいで、着飾ることもない中年女。
そんな女性に惹かれるってことからして、すでにメルビンいいヤツじゃんとか思ってしまうもん。

好きな人に素直になれないっていうのも、誰にでも共通するところで、
メルビンというキャラクターは特異でも、内容は非常に普遍的なラブストーリーでしょう。

そうした普遍性を持ちながらも魅力的な映画になっているのは
メルビンとキャロルの人物設定が実に細やかに描かれていることだと思う。
これって当たり前のことなんだけど、この肝心な部分が抜け落ちている映画の多いこと。
舗道の敷石をまたいで歩くメルビン、子どもの病院への送り迎えで疲れはてた姿のキャロル。
こうしたふたりの日常の描写の積み重ねがあるから、
ラストシーンでふたりが「一緒にパンを買いに行く」というシークエンスが
「ひとりの日常」から「ふたりの日常」になるわけだね、としみじみさせてくれるんだと思う。