Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

MILK

2009-05-11 | 外国映画(ま行)
★★★★☆ 2008年/アメリカ 監督/ガス・ヴァン・サント
<京都シネマにて鑑賞>
「ジェームズ・フランコに助演男優賞を」

ドキュメンタリー「ハーヴェイ・ミルク」を見ているので、もうひとひねり欲しかったというのが率直なところ。確かにそのタイトルが表すように、ひとりの人間としてのハーヴィー・ミルクに迫っている部分で、ドキュメンタリーにはない色合いもある。それは、ミルクの恋愛事情だ。特に冒頭いきなり地下鉄の階段でスコットをナンパするシーンが印象的。その後、ほとんど押しかけ婚のように居座るジャックとの関係も含め、ゲイカップルの赤裸々な日常がかいま見えて、その分ミルクの人間臭さが迫る。

実際のニュース映像と、現在のミルクと、昔のミルク。 時系列が前後しながら物語は進むが、さすがガス・ヴァン・サント。構成が絶妙。反ゲイの右翼活動家、アニタ・ブライアントの映像もあちこちで挟み込まれるが、全く違和感がない。ミルクの政治家遍歴というのは、途中で選挙制度が変わったこともあり、かなり複雑だ。市議や下院など何度も立候補しては落選する。そこをミルクのプライベートな事情を含めながら駆け足で追っていくわけで、やや性急な進行に置いてけぼり感を感ずるものの、全体的にはミルクのことを全く知らない人たちに彼の苦難と功績がしっかりと伝わる作品に仕上がっていると思う。

さて、ダン・ホワイトを演じるジョシュ・ブローリン。助演男優賞にノミネートされている割には出番が少ない。個人的には、このダンという男の存在をもっとスパイスを効かせて欲しかった。というのも、彼の凶行の理由は、激しいゲイへの憎悪、いわゆるヘイト・クライムではないからだ。ドキュメンタリーと本作で見た印象からしか推測できないのだが、おそらく彼は常に運動の先頭に立ち脚光を浴びるミルクへの激しい嫉妬心があった。また地盤の揺らぎや議会における孤立状態から、精神的な不安に陥っている。映画の図式として「ゲイVS反ゲイ」という成り立ちがあるのに、少し違う視点からダン・ホワイトの凶行が入ってくるのは、作品の流れとして居心地の悪さがある。ただ、近作のガス・ヴァン・サント作品を見るに、犯罪または犯罪者を個人的な解釈で必要以上に肉付けしないという彼なりの方法論かも知れない、とも思う。

ジェームズ・フランコが常にミルクの良き理解者であり、ずいぶん年下ながら母性的な包容力で支え続けるスコットを好演。愛する人がもはや自分だけのものではなくなっていく哀しみを見事に演じていたと思う。地下鉄の出会いから、ヒゲをたくわえた物静かな中年になるまで、なかなかいい年の取り方をしてゆく。ジョシュ・ブローリンよりも、ジェームズ・フランコの方がアカデミーノミネートにふさわしいと感じるのは私だけだろうか。

スラムドッグ$ミリオネア

2009-05-05 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2008年/イギリス 監督/ダニー・ボイル
<梅田ガーデンシネマにて鑑賞>

「エンタメ&ラブストーリー」

アカデミー作品賞を取ったので、社会派作品なんだと思っていました。ところが蓋を開けてみると、かなりのエンタメ路線。そして見事なラブストーリーなのでした。結果的には予想を裏切られたことによって、却って楽しむことができたという感じ。

ミリオネアのクイズの出題とほぼ同順でジャマールの過去が明らかになっていく、という展開はかなりご都合主義なんですね。本来ならば、やや興醒めしてしまうところですが、本作はそこを見事にクリアしている。それは、兄弟が過ごすムンバイ時代の躍動感あふれる、エネルギッシュな映像がすばらしいからです。原作ではクイズ番組の出題とジャマールの過去はもっと交錯してくるようですが、本作を娯楽作だと割り切って考えた場合、わかりやすさを優先したと考えるとあまり気になりません。

肥だめに落ちたり、追っ手から逃げ回ったり、電車に飛び乗ったり。兄弟が遭遇する現実は悲惨なのですが、映像は常にスピーディで生命力にあふれ、観客をぐいぐいと引っ張ります。ハリウッドがどんなに予算を出そうとも、あのインドの猥雑な街並みと群衆は再現できますまい。ムンバイにそびえるゴミの塔が圧巻です。

ジャマールとラティカのラブストーリーへと帰結してしまうことで、インドが抱える貧困問題はかき消されてしまうでしょうか。そんなことはありません。物乞いのために我が子を傷つけたり、売り飛ばしてしまう親たちがいる。兄弟がもがき苦しむ前半部の描写は容赦がなく、実に強い印象を最後まで残してくれます。

インド映画ではお馴染みのラストダンスもご愛敬。貧しさも苦しさも吹き飛ばしてやろうと言うインド人のパワーを感じます。それにしても、これだけ元気な映画が作品賞を獲るのは久しぶりではないでしょうか。あまりにも暗くて重かった「ノーカントリー」の反動かも知れません。



グラン・トリノ

2009-05-02 | 外国映画(か行)
★★★★★ 2008年/アメリカ 監督/クリント・イーストウッド
<TOHOシネマズ二条にて鑑賞>
「継承の美学」

イーストウッド演じるクソじじい。 むかつくけどカッコいい。 間違っているようで、正しい。 キャラクター設定がパーフェクト。 腹が立つと「ぐるるるるぅ~」と犬のように唸ります。 本当に犬のように。そして、何度も道につばを吐き、耳を塞ぎたくなるような差別発言をする。とにかく、演技者としてのイーストウッドが凄い。

「人はどう生きたか」よりも「どう死んでいくのか」だとよく対比される。しかし、この作品から私が感じるのは「人は何を伝えて死んでゆくのか」ということです。ずいぶんな差別発言が散見するけれども、結局ウォルトという男は「自分の信条に基づき、何事かを成す」ということに真っ直ぐな男なのだと思う。

同じ民族ということもあり、タオがギャングの仲間に入れば、おそらく一生抜け出すことはできまい。彼が仲間に入ることを止めさせるためには、これしか方法はなかろう…。終盤、ウォルトの決断をうすうす感じつつも、やはりエンディングでは涙が止まらなかった。常に銃を突き付けてきた人生。しかし、最後の最後で彼は銃を取り出すことはしなかった。暴力による復讐を止めて、彼はその引き替えに我が人生が最も輝いていた頃のシンボルをタオに継がせた。それは、さながらアメリカという国そのものを彼らが継承していくのだ、というメッセージのようにも思える。

戦争のトラウマ、時代に取り残された寂寥感、若者への不満…。 アメリカの老人の話ですけど、 これ日本で戦争体験のある老人に当てはめてもそのまま映画が作れそうじゃないかと映画館を出た後思っていたのですが、はたと気づきました。
これ、篠崎誠監督の「忘れられぬ人々」(三橋達也主演)にそっくりなんですね。 三橋達也は在日朝鮮人の同胞の形見を黒人の少年に手渡し、ある決死の行動に向かう。未見の方はぜひ比べて見ていただきたいです。

それにしても、なぜ本作がアカデミー賞にノミネートされなかったのか不思議でならない。作品賞はもちろんのこと、イーストウッドの完璧な演技は確実に主演男優賞ものだと思う。


乙訓寺

2009-05-01 | お出かけ
長岡天満宮から徒歩で15分くらい歩いたら、乙訓寺。
(おとくにでら で変換しないぞ。どうなってんだATOK!)

チケットがカワイイっす。


こちらも満開は少し過ぎてました。
でも、いろんなぼたんが楽しめましたよ~。
実は、最初息子に「かあちゃんと一緒にぼたん見に行こうよぉ~」って言いましたら
かなり渋々付いてきまして。
どうやら、洋裁好きの私だから、
洋服に付けるボタンを見に行くんだと思ってたらしい。
「ボタン屋さんじゃないのぉ~」と言う息子の言葉でビックリ。はは。







もちろん、御朱印頂きました。

真ん中の炎が燃えている印は、高野山と同じだぞ。
ふむふむ、空海繋がりだもんね。